スマート農業の活用により、今まで重労働のイメージが強かった農業の省労力化が実現しています。そのため、これから農業に挑戦してみようと考えている人もいらっしゃるでしょう。しかし、農薬の散布や作物の病気対策など農業初心者には難題も多くあります。
そんな農業に不慣れな人におすすめしたいのがオゾン水の活用です。オゾン水には種子の発芽率アップ効果や、農薬代わりに散布することで病気の発生を抑える効果があります。オゾン水によって近未来農業が変わるといっても過言ではありません。今回は、近未来農業としても注目されているオゾン水の活用方法について紹介します。
オゾン水の安全性と危険性

オゾンは3つの酸素原子から成り立っている物質で、消臭・除菌作用に優れています。そしてオゾン水は、オゾンガスが水に溶け込んだものです。しかし、オゾンガスやオゾン水の優れた殺菌消毒作用のため、人体にも害が及ぶのではないかと不安になる方もいらっしゃるでしょう。
まずは、オゾン水の安全性と危険性について解説いたします。
オゾン水の安全性

オゾン水に溶存しているオゾンは、常温中においては時間の経過とともに酸素へ分解していきます。そのため、オゾン水中のオゾン濃度は徐々に減少していき、酸素濃度が増加します。長時間、水中にオゾンが残らないので、オゾン水には残留毒性がありません。
例えば作物への農薬散布時は近隣住民への影響が心配ですが、オゾン水を使用するとオゾンが自然と酸素に戻るため、オゾンによる悪影響を気にせず安心して散布できます。
オゾン水の危険性

オゾン水それ自体に危険性はありませんが、オゾン水を生成する際に空気中に漏れ出るオゾンについて少し注意してほしい点があります。
オゾン水が人の肌へ付いてしまった場合、オゾンはすぐに酸素に分解されるため危険性はありません。しかし、オゾン水を製造する過程では十分注意が必要です。高濃度のオゾンガスを吸い込むと人体にとって非常に危険だからです。
オゾン水は水の中にオゾンガスを溶かしこんで製造しますが、一定量の水に溶けるオゾンの数は限られているため、溶けきらなかったオゾンが空気中へ放出してしまいます。オゾンを吸い込んでしまわないよう、室内でオゾン水を生成する場合は室内の換気を十分に行いましょう。逆にいえば、オゾン水生成時に換気さえしっかり行っておけば安全です。(キッチンでオゾン水を生成する場合、換気扇をONにする程度で問題ありません)
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オゾン水で発芽率アップ

農業において種子の発芽は大きなイベントです。しかし、種子は100%発芽するわけではなく、温度・水・酸素の3条件によって発芽率は左右されます。実は、オゾン水には種子の発芽を促進させる効果があります。
種子の周りの雑菌繁殖を抑える

種子の周りにはたくさんの雑菌が繁殖してしまいます。最悪の場合、ほとんどの種子がカビまみれになってしまうこともあるので、雑菌繁殖の抑制が重要です。この点オゾン水には高い除菌効果があるため、水の代わりにオゾン水を使用することで雑菌の繁殖を抑制できます。
また、水中に溶け込んだオゾンは徐々に酸素に分解していくため、種子の発芽に必要な酸素の量を十分に維持できます。つまり、雑菌繁殖の抑制と酸素の補給効果によって種子の発芽率を高められるということです。
種子の殻を軟化させる

オゾンクラックという現象を聞いたことのある人もいらっしゃるでしょう。バイクや車のタイヤは、オゾンによってひび割れ(オゾンクラック)が生じてしまうことがあります。車のタイヤと同じ現象が種子にも起こる可能性があります。
種子の表面は硬い殻に覆われており、発芽するためには硬い殻を破らなければなりません。しかし、オゾン水中のオゾンが種子に対してオゾンクラックを行い、硬い種子が柔らかくなることで発芽が促進されると考えられます。
農薬代わりに使えるオゾン水

従来の農業では、害虫駆除・病気の予防のために農薬を使用するのが一般的です。しかし、農薬には合成化学薬品が使われているため人体に悪影響を及ぼし、環境汚染も問題となっています。そこで、人体にも自然環境にも優しいオゾン水が農薬の代わりとして期待されています。
害虫駆除・病気の予防に役立つ

写真は葉や茎がうどん粉をかけたように白くなる症状の「うどんこ病」
季節を関係なく出荷できる野菜や花を育てるためにはビニールハウスでの栽培が最適です。しかし、ビニールハウス内は一定の温度・湿度で管理されているため、バクテリアや微生物が繁殖しやすい環境が整っています。
バクテリアや微生物は植物の生育に必要ですが、大繁殖してしまうと植物の生育に悪影響を及ぼしてしまいます。オゾン水を土壌中に散布することでバクテリアや微生物の繁殖を抑制でき、植物の生育中に散布することで病害の発生も予防できます。オゾン水の活用により、農薬の使用量が大幅に削減可能です。
土壌栽培以外のオゾン水の活用

オゾン水の活用が期待できる場面は、土壌栽培だけではありません。近年注目されている水耕栽培やロックウール栽培においてもオゾン水の殺菌効果が評価されています。
ネギの水耕栽培

出典:広島県総合技術研究所 農業技術センター
ネギの水耕栽培では夏の高温期における根腐症状が問題となっていました。そこで、培養液中にオゾン水を流すことでオゾン水の殺菌効果による菌密度の抑制がみられました。
しかし、オゾン水を連続して流すとネギの伸長まで抑制されてしまいました。そこで、ネギの伸長抑制緩和のためオゾン水を連続ではなく間断処理することで、菌密度の抑制は維持しつつ、根の伸長抑制の軽減効果が得られました。
トマトのロックウール栽培

出典:AGRIS advancing horticulture
オゾン水はロックウール栽培の養液殺菌にも有効です。ロックウール栽培とは土壌の代わりにロックウールポットを使用した栽培方法で、世界中で将来性が期待されている栽培法です。
病気の発生が少なく連作も可能であるという利点がありますが、養液の循環を行うためには養液の殺菌が必要です。三重県農業研究所におけるオゾン水による養液殺菌では、トマト根腐萎凋病菌や青枯病菌の殺菌効果が得られています。
野菜や果物の除菌と残留農薬の除去

写真は業界ベストセラーの「オゾンバスター」というオゾン水生成器
オゾン水は野菜や果物についた菌の除菌や農薬の除去に効果を発揮します。その方法はとても簡単で、オゾン水を貯めたシンクや容器の中に野菜を入れるだけです。先ほどもお話しましたが、オゾン水中のオゾンは簡単に酸素に分解していくため、野菜や果物をつけ置きしておくだけではすぐにオゾンが減少してしまいます。
ゆっくりとオゾン水をかけ流しておくことで、野菜や果物の表面に付いた菌や農薬が取り除かれていきます。また、コンパクトタイプのオゾン水生成器を使用する場合は水中に連続してオゾンを発生させられるので、溜め置きが可能です。スーパーで購入した野菜や果物の農薬除去はもちろん、自家栽培の野菜や果物の除菌にも活用できます。
未来の農業はオゾン水でより安全に

今回は、農業分野におけるオゾン水の活用方法を紹介しました。オゾン水中のオゾンは時間経過と共に酸素に分解されるので、人体に悪影響を及ぼしません。そのため、人が口にする野菜や果物を栽培する農業分野においても安心して使用できます。
そして、種子の発芽を行う際もオゾン水中のオゾンが酸素を提供し、菌の抑制効果も発揮するため、種子の発芽率は上昇します。さらに、オゾン水の高い殺菌消毒作用を利用して農薬代わりにも散布できることは、これからの農業を大きく変えていくでしょう。
近年広まりつつあるスマート農業では、トラクターの自動運転により作業者が監視するだけで整地作業が行えます。また、農薬の散布もドローンを操縦することで楽に行え、農作物の収穫もAIを搭載したロボットの活用によって自動収穫が可能です。
近未来農業では、スマート農業の活用によって労働者の負荷が削減され、さらにオゾン水の利用によって安全な野菜や果物が消費者に届けられるようになるでしょう。
<参考資料>
家庭用オゾン発生器の安全性
http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20090827_1.html
農業分野でのオゾン水の利用
http://h2o-f.jp/ozon_nogyo.html
日本国特許庁(JP)特開2008-31135
農園芸用土壌オゾン酸化消毒殺菌方法とその装置
水耕ネギ栽培におけるオゾン水による培養液の殺菌方法
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/98410.pdf
オゾン水を利用したロックウール栽培トマトの養液殺菌システム
http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/seika/kanto22/11/22_11_08.html
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