オゾンに関する学術論文「新しい展開に入ったオゾン水の利用技術(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe2000/2/3/2_3_103/_pdf/-char/ja)」を超平易に解説します。
今回は、神鋼プラント建設株式会社のオゾン本部生産技術部の西村喜之さん、金谷隆文さん、大久保典昭さん、岡田和久さん、花田圭司さんが2001年に日本食品工学会誌に寄稿した「新しい展開に入ったオゾン水の利用技術」を紹介します。
記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。
超ざっくりいうと
まずはこの論文を、超ざっくり解説します。
著者たちは、食品の殺菌や二次汚染防止に、次亜塩素酸ナトリウムではなく、オゾンを積極的に使ってみよう、と呼び掛けています。
次亜塩素酸ナトリウムを食品に使うと、消費者が食べるときになっても臭いが消えなかったり、有害物質が発生したりするからです。
オゾンは自然界に存在する物質なので、時間が経てば臭いや有害物質の心配はありません。
オゾンの有用性を知っている方がこの論文を読むと「当たり前のことを言っている」と感じるかもしれません。それもそのはずで、この論文が発表されたのは2001年です。
つまり、この論文を読めば「20年前の食品殺菌の常識」がどのようなものであったがわかります。
もう少し具体的に紹介すると
それでは論文の内容をもう少し具体的に紹介します。
オゾン利用のメリットとデメリット
食品にオゾンを使うと、次の5つのメリットが得られます。
- 殺菌
- 脱臭
- 脱色
- 有害物質の酸化と分解
- 生物活性
このうち食の安全に最も深くかかわる殺菌では、オゾンを使えば以下のような効果を得ることができます。
- 細菌やカビ、ウイルスに有効
- オゾンはすぐに酸素に戻るので残留性がなく安全性が高い
- 後洗浄が要らないので環境への負荷が小さい
- 後洗浄が要らないので環境への負荷が小さい
- 細菌の細胞膜を破壊するので耐性菌をつくらない
- 非加熱処理
次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤でウイルスや細菌を叩くと、ウイルスや細菌は耐性を持つようになります。耐性とは、殺菌剤に耐えうる力のことです。ウイルスや細菌が耐性を持ってしまったら、もその殺菌剤は効果がありません。
しかしオゾンは耐性をつくらせずにウイルスと細菌を叩くことができるので、いつまでも効果が継続します。
ただオゾンを食品殺菌に使うとき、次のようなデメリットもあります。
- 無害化するまでは、オゾンを浴びると人の呼吸器系に悪影響を及ぼす
- 酸素に戻る前は独特の臭いがする
- 長期保存できない
- 鉄やゴムの腐食や劣化を促進してしまう
オゾン利用の歴史
出典:尼崎市立地域研究史料館
オゾンは1840年にドイツで発見されました。フランスで1906年、オゾンが初めて浄水処理に使われました。そして人の治療にオゾンが初めて使われたのは1915年です。
日本で人の病気に対するオゾン療法が始まったのは1920年代です。
水道水のカビ臭対策でオゾンが使われたのは、尼崎市水道局神崎浄水場(兵庫県)の1973年が初めてです。
苦労してオゾン水にたどりついた
これだけの殺菌効果がありながら、オゾンを食品殺菌に使うことは苦労しました。オゾンが殺菌効果を発揮するにはある程度水分が必要だからです。空間にオゾンを散布しても、空間内の湿度が低いと浮遊している菌を殺菌できません。
そこで著者たちは、オゾンを水に溶かしたオゾン水をつくり、これで食品の殺菌洗浄をしたところ、好成績をおさめることに成功しました。
大腸菌をオゾン水に浸けると30秒で全滅させることができます。また従来は、オゾンではカビを撃退できないと考えられていましたが、オゾン水は効果覿面(てきめん)でした。オゾン濃度が5mg/Lのオゾン水は、600秒でカビを全滅させることができました。濃度を上げた15mg/Lのオゾン水なら、300秒で全滅しました。
「この殺菌」に向いている
まとめ~人を守る
資料名 | 新しい展開に入ったオゾン水の利用技術 |
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著者 | 神鋼プラント建設株式会社 オゾン本部生産技術部 西村喜之、金谷隆文、大久保典昭、岡田和久、花田圭司 |
リンク | https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe2000/2/3/2_3_103/_pdf/-char/ja |