オゾンに関する学術論文「水溶液中のオゾンの自己分解(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakoronbunshu1975/4/4/4_4_377/_pdf)」を超平易に解説します。
今回は九州大学工学部の諸岡成治さん、池水喜義さん、加藤康夫さんが1978年に化学工学論文集に発表した「水溶液中のオゾンの自己分解」を紹介します。
記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。
超ざっくりいうと
まずはこの論文を、超ざっくり解説します。
オゾンは殺菌作用がありますが、人が高濃度のオゾンを浴びると毒になります。しかしオゾンは放っておけば酸素に戻り完全無害化する性質があるので、特殊な処理をせず時間が経過すれば無害化します。
それであるならば、オゾンがどれくらいの時間で無害化するのか知っておけば、オゾンを安全に使うことができます。
この論文では、無害になるまでのスピードを調べています。
もう少し具体的に紹介すると
それでは、もう少し深く論文の中身に踏み込んでいきましょう。
オゾンは強い酸化力があり、その力で殺菌や脱臭、脱色、さらに有機物や無機物を除去します。酸化とは物質が酸素と結びつく現象のことです。オゾンは酸化の過程でこれだけの「仕事」をするわけです。
しかし人がオゾンを直接浴びると、害を及ぼします。そこでオゾンで殺菌などの作業をするときは細心の注意が必要なのですが、放っておけば自然と無害化されるので、それを待てば「細心の注意を払うコスト」が要らなくなります。
諸岡さんたちは、溶存オゾンの自己分解速度を調べることにしました。
溶存オゾンとは、水に溶けている状態のオゾンのことです。自己分解速度とは、オゾンが無害になるまでの時間のことです。
実験方法
諸岡さんたちは、次の方法で溶存オゾンの自己分解速度を計測することにしました。
- 純酸素を原料にして、無声放電という方法でオゾンをつくる
- 蒸留水にオゾンガスを吹き込んで溶解させる(オゾンを水に溶かして溶存オゾンをつくる)
- その蒸留水はpH2〜9の間で調整する
- その溶存オゾンを注射器に200cc採取し、このときを「時間0」とする
- 一定時間ごとに注射器から溶存オゾンを10cc採取してオゾンの量を測る
注目ポイントは、オゾンガスを吹き込む蒸留水を複数用意して、それぞれのpHを変えることです。
つまりオゾンを溶かす蒸留水のpHの値によって、自己分解速度がどのように変わるのか調べようというのです。
蒸留水のpHが高いほど明らかに自己分解速度が速い
実験では、pH2.8、4.4、5.3、6.0、6.5、6.9の6種類の蒸留水で溶存オゾン(いわばオゾン水)をつくり、自己分解速度を計測しました。
その結果、一定時間後に分解されるオゾンの量は、pHの数値が高いほど多くなることがわかりました。つまり自己分解速度が速くなる、というわけです。
まとめ~40年前からオゾン研究がなされてきた
この論文は、令和元年から40年以上前の1978年に書かれたものです。その時代からオゾン研究者たちは、オゾンを安全に使いこなすことを検討していたことがわかります。
それだけオゾンが必要とされていたわけです。
資料名 | 水溶液中のオゾンの自己分解 |
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著者 | 諸岡成治・池水喜義 加藤康夫 九州大学工学部 応用化学科 |
リンク | https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakoronbunshu1975/4/4/4_4_377/_pdf |