オゾンに関する学術論文「オゾンマイクロバブルを用いる高BOD廃液処理技術の開発(https://www.pref.chiba.lg.jp/sanken/kenkyuu/library/h21/documents/h21_03.pdf)」を超平易に解説します。
今回の論文は「オゾンマイクロバブルを用いる高BOD廃液処理技術の開発」で、著者は以下の方々です。
株式会社フジコー(千葉県白井市)の田中弥さん、龍頭克典さん、斎木みささん、森文彦さん、上竹智久さん。
産業技術総合研究所(東京都千代田区)の高橋正好さん。
論文の発表時期は定かではありませんが、論文のなかで扱っている研究は2008年ごろに行われています。
記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。
超ざっくりいうと
まずはこの論文に書かれてある内容を、超ざっくり紹介します。
株式会社フジコーと産業技術総合研究所が共同で、オゾンを活用する「高BOD廃水処理システム」という環境保護技術を開発し、その性能を論文で紹介しています。
ここでの環境課題は、食品廃棄物を家畜の飼料に加工するときに発生する廃水です。この課題を、オゾンを使った特殊技術で解消したわけです。
もう少し具体的に紹介すると
それでは論文の内容をもう少し具体的に紹介します。
株式会社フジコーの環境課題と専門用語の整理
出典:バーチャル未来科学館
フジコーは高BOD廃水処理システムを、自社が抱える環境課題を解決するために開発しました。その際、産業技術総合研究所が開発した「オゾンマイクロバブル圧壊法」を使いました。
フジコーは飲食店などから出る食品廃棄物を飼料や堆肥にする事業を行っています。このとき出る廃水にBOD(生物化学的酸素消費量)の値が高くなってしまう問題がありました。
BODは、微生物が水中の汚れを食べるために使った酸素量のことで、BODの値が高いということは、その水が有機物などで汚れていることを意味します。フジコーではコストをかけてこの廃水を処理していました。
廃水を効率よく処理するために、オゾンマイクロバブル圧壊法を応用した高BOD廃水処理システムを開発しました。
マイクロバブルは微小な気泡という意味です。水中の気泡は急速に上昇して水面に達して破裂しますが、マイクロバブルは水中に長時間漂い、水中で消滅します。水中で消滅することを圧壊といいます。
オゾンマイクロバブル圧壊法を使えば、オゾンの微小な気泡を汚れた水のなかで漂わせることができるので、オゾンが持つ殺菌効果が高まることが期待できます。
しかし、オゾンマイクロバブル圧壊法だけで、高BOD廃水処理システムを構築できたわけではありませんでした。
オゾンの力が及ばないところは生物処理で
マイクロバブルにしたオゾンだけでは、BODが低下すると処理能力が低下することがわかりました。つまり廃水の汚れ成分を完全に落とし切ることはできません。
そこでオゾンマイクロバブル圧壊法の後に、微生物を使った生物処理を行うことにしました。
高BOD廃水処理システムはオゾンマイクロバブル圧壊法と生物処理の2つで構成されているわけです。
オゾンマイクロバブル圧壊法の効果
400Lの廃水を、オゾンマイクロバブル圧壊法を使って処理をしたところ、12,500mg/LあったBODは48時間で半減しました。その後96時間で5,000mg/Lまで減少しましたが、それ以降は192時間までそれほど減りませんでした。
オゾンが消えないことが問題に
実験のなかで問題も生じました。それは役割を終えたオゾンが消えないことでした。
オゾンは強い殺菌作用を持つ便利な物質ですが、人がオゾンを浴びると呼吸器官や肺に障害が起き、最悪、死に至ります。そこで日本では、オゾン濃度0.1ppmを労働環境の許容濃度としています。
ところが今回、実験室の空気中のオゾン濃度が最大0.82ppmにもなりました。基準値の8倍以上です。
そこで本論文では「実用段階では装置を野外に設置したり、必要に応じて活性炭などで排オゾンを分解させたりする必要がある」と指摘しています。
生物処理の方法
オゾンマイクロバブル圧壊法の後工程である生物処理では、廃水に微生物のエサとなる窒素やりんを添加したり、pH3.0と強酸性の廃水にアンモニア水を加えて中和したりしました。
その結果BODを含む有害物質が急激に減少することを確認することができました。
BODは最終的に20~30mg/Lにまで減りました。
BODは当初12,500mg/Lもあったので、「オゾンマイクロバブル圧壊法+生物処理」の高BOD廃水処理システムによって417~625分の1にまで減らせることに成功しました。
まとめ~ろ紙でなんとか目標クリア
出典:Wikipedia
BODを417~625分の1にまで減らすことはできましたが、研究チームの目標はBODを、河川に放流できる基準値の15 mg/L以下にすることでした。結果は20~30mg/Lだったので、目標を達成することはできませんでした。
しかしその後、ろ紙を使って処理したところ、BOD8mg/Lまで下がりました。なんとか目標をクリアすることができました。
この論文の全文は以下のURLで読むことができます。
資料名 | オゾンマイクロバブルを用いる高BOD廃液処理技術の開発 |
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著者 | プロジェクト推進室 田中 弥,化学環境室 龍頭 克典,斎木 みさ,森 文彦 株式会社フジコー 上竹 智久 (独)産業技術総合研究所 高橋 正好 |
リンク | https://www.pref.chiba.lg.jp/sanken/kenkyuu/library/h21/documents/h21_03.pdf |