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論文「オゾンによる魚類飼育用水の殺菌法 : 特に海水への応用」を超平易に解説

オゾンに関する学術論文「オゾンによる魚類飼育用水の殺菌法 : 特に海水への応用(https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/39508/1/yoshimizu-143.pdf)」を超平易に解説します。
今回は北海道大学大学院水産科学研究科の笠井久会さんと吉水守さんが2001年8月に日本医療・環境オゾン研究会会報で発表した「オゾンによる魚類飼育用水の殺菌法:特に海水への応用」を取り上げます。

記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。

超ざっくりいうと

マグロの稚魚

出典:マルハニチロダイレクト「『完全養殖本まぐろ』の軌跡」

日本は魚の養殖が盛んですが、稚魚などを育てる飼育施設や飼育用の水、エサに細菌やウイルスなどが発生して、被害が出ています。水を殺菌する方法は、紫外線、塩素、高分子濾過膜などがありますが、どれも高い技術が必要で、しかもコスト高です。
そこでオゾンをつかった殺菌「オゾン殺菌法」の可能性について探ってみました。

結論を先に紹介すると、オゾン殺菌法は「うまくいく」ことがわかりました。ただ、海水をオゾン殺菌するとオキシダントという有害物質が発生してしまうので、飼育に使う前にオキシダントを活性炭で除去しなければなりません。また、魚の種類によってオゾンの濃度を変える必要があります。

つまりオゾン殺菌法は、魚の養殖の現場で有効活用できる可能性はありますが、課題もあることがわかりました。

もう少し具体的に紹介すると

もう少し具体的に紹介すると

それでは、もう少し深く論文の中身に踏み込んでいきましょう。

そもそもオゾン殺菌法とは

オゾン殺菌法は、養殖で使う水を溜めておく処理槽にオゾンを吹き込み、水中の微生物や細菌やウイルスを殺したり減らしたりする殺菌法です。オゾンは、高圧放電法や電解法によって発生させます。

ただオゾンは、魚や人にとっても「毒」です。したがってオゾン殺菌した後の水は、曝気(ばっき)や活性炭によって残留したオゾンや反応生成物を除去する必要があります。

曝気とは、水を空気にさらして毒性を低下させることです。
反応生成物とは、水をオゾンにさらしたことで誕生してしまう有害物質のことです。反応生成物のなかでも、海水中のさまざまな成分とオゾンが反応して生まれるオキシダントは、強力な酸化作用があり健康被害をもたらすことが知られています。

オゾン殺菌法の効果

オゾン殺菌法の効果

水処理におけるオゾン殺菌法は、効果が発揮する場合と、発揮しない場合があります。それらをまとめてみます。

  1. グラム陰性菌には効果があるが、グラム陽性菌、酵母、放線菌にはあまり効かない
  2. 淡水に発生する「せっそう病原因菌」「口赤病原因菌」「伝染性膳臓壊死症ウイルス」「伝染性造血器壊死症ウイルス」には効く
  3. 海水に発生する「せっそう病原因菌」「ピプリオ病原因菌」など6種の魚類病原細菌には効く
  4. ブリの膳肝壊死症原因ウイルスと、ヒラメのラブドウイルスには効く
  5. サケ科魚類の伝染性騨臓壊死症ウイルスには効く

ただ、魚の種類や細菌やウイルスの種類によってオゾンの投入量を調整する必要があります。

オキシダントについて

オキシダントについて

オキシダントは魚に対して毒性があり、しかも長期間残留してしまいます。例えば、マツカワでは、オキシダントの濃度が0.1mg/L(1リットルあたり0.1mgのオキシダントを含む)の海水に入れておくと16時間後にはすべて死んでしまいます。孵化したばかりの魚や稚魚なら、0.5mg/Lの濃度で10~20分ほどで死んでしまいます。

ただ、甲殻類はオキシダントに強く(オキシダントにやられにくく)、0.5mg/Lの濃度でも、ケガニは45時間、ハナサキガニは139時間生存しました。オキシダントを取り除くには、活性炭が使われています。

活性炭は「実績あり」

種苗生産システム研究会というチームが、オゾン殺菌した後に活性炭でオキシダントを除去した海水でヒラメの稚魚を飼育したところ、海水中の細菌が1万分の1に減ったことがわかりました。一方、紫外線処理した海水では、細菌は10~100分の1にしか減っていません。

それでいて、稚魚の生存率は、「オゾン殺菌+活性炭」海水と「紫外線処理」海水ではほとんど変わりありませんでした。
「オゾン殺菌+活性炭」は「実績がある」といえます。

まとめ~オゾンの投入量と活性炭がカギ

まとめ~オゾンの投入量と活性炭がカギ

オゾンを使えば海水をかなりきれいに殺菌でき、魚の養殖に使えることがわかりました。ただ、細菌やウイルスや微生物の種類や、養殖する魚の種類によって、投入するオゾンの量を調整する必要があります。

また、魚に使う前に、オゾン殺菌水のなかに発生したオキシダントを活性炭で除去する必要があります。

参照論文の全文は、以下のURLで読むことができます。

資料名オゾンによる魚類飼育用水の殺菌法:特に海水への応用
著者北海道大学大学院水産科学研究科 笠井久会,吉水守
リンクhttps://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/39508/1/yoshimizu-143.pdf

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