オゾンプラス

日本最大級のオゾン専門ポータルサイト|オゾンプラス

論文「オゾンで魚を育てる」を超平易に解説

今回は一般財団法人電力中央研究所の清野通康さんが1994年の「電学誌 114巻10号」に投稿した「オゾンで魚を育てる」を紹介します。

超ざっくりいうと

論文「オゾンで魚を育てる」を超平易に解説

まずはこの論文を、超ざっくり解説します。
著者は「強力な酸化力と殺菌力を持つ」オゾンは、魚を健全に育てる水をつくるのに「効果がある」と主張しています。

その「魚」とは、サケやマスなどの淡水魚、ヒラメやマダイやシマアジなどの海水魚、水族館の観賞用の魚など、さまざまな魚のことです。

論文では、効果が出ているオゾンの使い方を紹介しています。

もう少し具体的に紹介すると

もう少し具体的に紹介すると

それでは、もう少し深く論文の中身に踏み込んでいきましょう。
論文では、魚を飼育する現場では「オゾンをこういうふうに使い」「こういう効果を挙げている」と解説しているので、ここでもそのように紹介していきます。

水族館の魚

水族館の魚

著者によると、魚を飼育するための水を、最初にオゾンで殺菌したのは、水族館でした。
水族館では、客が魚をしっかり見ることができるように、水の透明度を高めなければなりません。そのため、オゾンの「水の脱色効果」が注目されました。

水族館では、淡水の飼育水も、海水の飼育水も、循環して利用しています。すると、時間の経過とともに水のなかの有機物が蓄積してき、水が黄褐色に濁ってきます。
この濁りの物質は「黄色物質」と呼ばれ、水の透明度を下げるだけでなく、魚の生育に悪影響を及ぼすこともあります。
水族館でのオゾン利用は、水の透明度を高めるだけでなく、魚の健康にも寄与してきました。

ヒラメを飼っている水での実験

ヒラメを飼っている水での実験

ヒラメの飼育で使っている「循環ろ過水」をオゾンできれいにした実験を紹介します。
十分に汚れた「ヒラメの飼育水」から黄色物質を取り出し、その黄色物質を水に溶かしました。その汚れた水に「1時間当たり14mgのオゾン」を流したところ、約10時間で脱色できました。
水のなかの黄色物質の量は、処理前は「10の3乗ぐらい」ありましたが、オゾンでの処理後は「10の2乗ぐらい」にまで低下しました。
オゾンが黄色物質を分解して、それで水の透明度が回復したのです。

この実験では、オゾンの量を減らして「1時間当たり2.8mgのオゾン」を流してみましたが、効果は出ませんでした。
効果を出すには、一定のオゾン濃度が必要であることがわかりました。

魚にとっての「毒」を減らす

魚を飼育する水には、魚にとって毒となる「亜硝酸」が含まれることがあります。オゾンを使うと、亜硝酸が、より毒性が低い「硝酸」に変わることがわかっています。

また、海水のなかのアンモニアも、魚にとって毒ですが、オゾンはこれを、毒性が低い窒素ガスにします。
オゾンと海水中の臭素イオンが反応して次亜塩素酸ができ、これがアンモニアを窒素ガスに変えます。
著者は、「オゾンは、海水のアンモニアを窒素ガスにする手法としては、最も確実で安定している」としています。

海水や湖水を使った養殖施設の水の処理

海水や湖水を使った養殖施設の水の処理

魚の養殖施設は、その魚が獲れる海や湖などの近くにつくられることが一般的です。それは、その魚に適した海水や湖水を簡単に入手できるからです。
しかし、海水や湖水を使えば、そのなかに含まれる病原生物が、養殖施設のいけすに侵入する危険があります。
そこで、いけすに入れる前の海水や湖水を、オゾンや紫外線で処理すれば、病原生物の侵入を防止できます。

著者によると、サケやマスなどの淡水魚の養殖施設ではオゾン殺菌が普及していますが、海水魚の養殖施設では「まだ開発段階、試行段階」といいます。
ただこの論文は1994年に発表されたものなので、現状は変わっている可能性があります。

オゾン殺菌のメカニズム

オゾン殺菌のメカニズム

オゾンはどのようにして、魚を飼育するための水を殺菌しているのでしょうか。
オゾン殺菌は、殺菌が必要な水を貯めた水槽に、オゾンガスを吹き込む形で行ないます。オゾンやオキシダントによって、水中の微生物が殺されます。
オキシダントとは、オゾンと水中の物質が反応して生まれる物質のことで、これも強い酸化力を持ちます。
オキシダントは病原菌を殺すのですが、魚にとってマイナス効果も生みます。この点は次の章で紹介します。

魚病細菌は、一般的に0.5㎎/Lのオゾンに15~60秒触れさせただけで、ほぼ完全に殺菌できます。
養殖のブリやヒラメに起きる病気の原因となるウイルスは、1mg/Lのオゾンに15~60秒に接触させることで99.9%以上低下します。

オゾンで飼育水を殺菌するうえでの当時の課題

オゾンで飼育水を殺菌するうえでの当時の課題

オゾンを使って、魚を飼育する水を殺菌するときの課題は次のとおりです。

  • オゾンを直接、人や魚に吹き付けると「毒」になるため、使用時は排気処理をする必要がある
  • 海水をオゾン殺菌するとオキシダントがつくられる。オキシダントは海水を殺菌する一方で、魚にとって毒になってしまうので、飼育に使うときは除去する必要がある
  • オゾン発生装置やオキシダント除去装置には多額のコストがかかる

水の殺菌方法には紫外線を使う方法もあり、こちらはオキシダントを発生させません。しかし殺菌力や殺虫力ではオゾンのほうが優れています。
ニジマスやブリの病原となる「一部のウイルス」と「スクーチカやイクチオボドなどの寄生虫」を殺すには紫外線では不十分で、オゾンが必要になります。
そのため、上記の3つの課題をクリアして、オゾン利用を進めたほうがよい、ということになります。

まとめ~強くオゾンを推している

まとめ~強くオゾンを推している

著者はかなり強くオゾンを推していて、その気持ちは「オゾンで魚を育てる」というシンプルな論文タイトルにも表れています。
当時、著者は、コストやオキシダントといった課題をクリアして、魚の養殖の現場でオゾンの活用が広がることを願っていたかと思いますが、2020年現在、今ではその想いがさまざまな場面で現実のものとなっています。

この論文は以下のURLで全文を読むことができます。

論文名オゾンで魚を育てる
著者一般財団法人電力中央研究所 清野通康
リンクhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1994/114/10/114_10_649/_pdf

Copyright © OZONE PLUS. All Rights Reserved.

上へ