タイは言わずと知れた観光先進国であり、首都バンコクは、世界で最も多くの外国人旅行者が訪れる都市です。
クレジットカード大手米マスターカードが毎年発表する世界132都市を対象とする「世界渡航先ランキング」の最新版で、バンコクは海外からの渡航者数が2,000万人を突破し、ランキング首位であると現地紙バンコク・ポストなどが報じました。(2015年以降連続首位)
そんな世界屈指の都市バンコクにあるホテルで衛生問題への取り組みはどのように行われているのでしょうか。
日本国内のホテルや旅館等の宿泊施設関連業の皆様にとって、当記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。
バンコクと東京の渡航者の比較
世界渡航先ランキング2018 上位10都市
都市 | 2017年渡航者数(単位:百万人) | 2018年成長予測 | 平均滞在日数 | 1日あたりの平均消費額 |
---|---|---|---|---|
バンコク | 20.05 | 9.6% | 4.7泊 | $173 |
ロンドン | 19.83 | 3.0% | 5.8泊 | $153 |
パリ | 17.44 | 2.9% | 2.5泊 | $301 |
ドバイ | 15.79 | 5.5% | 3.5泊 | $537 |
シンガポール | 13.91 | 4.0% | 4.3泊 | $286 |
ニューヨーク | 13.13 | 4.1% | 8.3泊 | $147 |
クアラルンプール | 12.58 | 7.5% | 5.5泊 | $124 |
東京 | 11.93 | 1.6% | 6.5泊 | $154 |
イスタンブール | 10.70 | 19.7% | 5.8泊 | $108 |
ソウル | 9.54 | 6.1% | 4.2泊 | $181 |
発行資料より
世界渡航先ランキングの首位がどれだけすごいのかというと…
東京も世界を代表する都市であり、ランキングでも8位に入っています。東京都の発表「東京都の人口(推計)」の概要(平成30年1月1日現在)によると、東京都の人口が13.75(百万人)ということですから、毎年東京都の人口とさほど変わらないような渡航者数だということになります。東京ですら十分すごいと言えますが、そんな東京も世界ランキング首位のバンコクと比較してみると、渡航者数は約1.7倍、成長予測は6倍とバンコクが圧倒しています。
それでは早速、世界屈指の都市で営業するホテル等の宿泊施設では一体どんな問題に悩みを抱え、またどのような対策を行っているのかみていきましょう。
ちなみに、タイではよく観光戦略についての議論やマーケティングも活発に行われているため、あらゆるホテルマネジメントが効率化されていることを考えると、日本の現状と比較しても、「一歩先を行っている」といってもいいでしょう。
バンコクという都市のくくりではなく、タイという国でみると、タイには5つ星の高級ホテルが110軒ありますが、日本は28軒しかありません。このことからも、バンコクが観光先進国であることが窺い知れます。
バンコクのホテルでも一番の問題は衛生問題だった
タイの首都バンコクには、世界中から観光やビジネスを目的に人が集まります。そして、観光・ビジネス問わず、滞在するゲストがホテルに求めるもっとも重要なポイントは「清潔であること」です。そのことは、日本国内の旅行予約サービス等の宿泊施設に関する口コミや評判を見たり、日頃の業務からもお分かりかと思います。
宿泊施設関係者の方々は、よほど危機意識が低くない限り、これらのレビューが決して対岸の火事ではないことをご存知のはずです。
最近のレビューシステムでは、多くの良い評価にたった数件悪い評価が付いても、そのレビュー内容がユーザーにとって参考になり、かつ有益だと判断されれば、レビュー閲覧時のトップまたは目立つ場所に「多くのユーザーが参考にしています」などとし、レビュー内での露出を高め、低評価レビューはさらなる低評価レビューを招く傾向にあるので、注意が必要です。
特に、ニオイに関しての問題はゲストに強い印象を与え、不快にさせてしまうため、手厳しい内容の低評価レビューにつながります。加えて、日本の施設では、施設側が講じる他の問題よりその対策が正しくなされていない印象です。
実は、観光先進国のバンコクでも、ニオイの問題は日本のホテルや旅館のそれと変わらず、「衛生環境を守るうえでもっとも重要な項目」と位置づけられています。ただし、その対策・力の入れ具合が少し異なります。
次項で詳しく解説しましょう。
渡航先ランキング世界首位のバンコクでも衛生問題はオゾンで解決されている
「なぁーんだ、オゾンならうちもやっているよ」と思うなかれ。そのオゾン発生器の使い方や活用方法が異なりますので、以下具体的に説明します。
日本でも、多くの宿泊施設がオゾン発生器を利用していますが、そのほとんどが「客室清掃の際、ニオイがキツい部屋」に限って、無人環境で使用する業務用オゾン発生器を稼働させる」というものだと思います。
一方、バンコクの宿泊施設では、客室清掃時に無人環境で使用する業務用オゾン発生器をほぼ全室で利用します。
それは管理コストを軽減したり、ミスを減らすためです。ニオイがキツいかどうかの判断を行う1人の清掃担当者に依存することなく、「全客室オゾン消臭を◯◯分実施」という均一の対応にし、マニュアル化することで精度は高まり、また判断の数も減ります。判断の数が減れば、ミスも減るというホテルマネジメントの一環です。
加えて、廊下やエレベーター前の共用スペースにも低濃度オゾンを発生させる有人環境専用のオゾン発生器が常時稼働しています。つまり、有人・無人のダブルアタックがスタンダードな対策です。
なぜ、現地の施設ではそこまで力を入れて、オゾンを使うのでしょうか。
それは、バンコクがただ単に「渡航者が多いから」というだけではありません。バンコクは、1年を通して気温が高く、雨季も短くないことから菌やウイルスが過ごしやすい環境を自然と作り出してしまうことから、その対策(除菌)としてオゾンがベストであることを知っているからに他なりません。
もし、あなたが観光やビジネスでバンコクに訪れ、市内のホテルに宿泊されたとき、そのホテルを清潔だと感じたのであれば、ほぼ確実にその施設はオゾン発生器を導入していると考えて間違いないでしょう。
たとえば、一例を出すと、このホテルでは、エレベーターを降りた正面にスティックタイプのオゾン発生器が設置されています。
たまたまコードがピタッと壁に沿って固定されていなかったので気付きましたが、コードがきれいに壁に沿って設置されていれば気づかない、あるいは気にしない人がほとんどでしょう。
機器周辺に軽く顔を近づけてみると、オゾン臭を感じました。(絶対に真似しないで下さい)
オゾン臭気の度合いや、この機器の形状からして、この製品のオゾン発生量は30〜100mg/hr程度と推測しました。
このスティックタイプ(全長90cmほど)のオゾン発生器は、どう考えても大した風量はないはずです。
ふと気になりました。
「このホテルの支配人あるいは担当者は何故この製品を選んだのだろう」と。
廊下をよくよく見渡してみると、両端に大きめのエアコンを発見しました。そして、天井部には、約5m間隔で空調があり、そこから送風(冷風ではない)が出ていることで、長い廊下をエアコンの冷風がほどよく循環し、心地よい温度を保っているようでした。つまり、廊下の空気は廊下内を循環しているため、その流れに乗ってオゾンもまたほどよく拡散されているのです。
風量が多量のオゾン発生器は、大きな風量を作り出すためそれなりの大きさのファンを内蔵する必要があります。そのため、必然的に、本体の外形寸法も大きなものになり、日本でもよく見かけるゴツゴツとしたいかにも業務用という外観の製品が一般的です。
しかし、このホテルの支配人は、「この機器を設置する共有部は、すでに冷風をゆっくり循環させているため、自然とオゾンは拡散される。オゾン発生器自体に風量は必要なく、その分、ゲストが目にしても共用部の景観に影響がないデザインがいいだろう」と考えたのかもしれません。
普通の人が聞いたら「なるほど!」と思うようなことも、観光先進国のバンコクで営業するホテルでは「当たり前」というレベルで取り組まれていることが実に驚かされます。是非日本でもこのレベルで衛生問題に取り組んでいっていただきたいと感じます。
↑これは、また別のホテルの画像です。トイレ近くに設置されていました。その外観の形状からもお分かりいただけると思いますが、この機器は空気清浄機ではありません。10mg/hrのオゾン発生器だそうです。24時間常時稼働(オゾン発生)とのことです。騒音値はわりと大きく、空気清浄機の急速運転時(40dB超)ほどあるかもしれません。外観や騒音値が大きいだけに風量もそこそこありそうでした。
電源コードが目立ちましたが、シンプルかつオシャレな外観のため、おそらく普通の方は空気清浄機かなと思う程度でさほど気にもならないでしょう。
この記事のまとめ
日本でオゾン発生器といえば、どちらかというとニオイ問題を解決するイメージの方が強いかもしれません。
しかし、そもそもニオイの原因は菌やウイルスの増殖です。ですから、菌やウイルスの増殖を抑止するか減らすなどして除菌することで、ニオイがなくなります。
つまり、除菌することは取りも直さず消臭することなのです。
世界渡航先ランキング首位であり、1年を通して気温が高く、雨季も長いため菌やウイルスにとって増殖しやすい環境であるともいえるそんなバンコク市内の多くのホテルがオゾン消臭除菌を当たり前のように取り入れていることは、それもまた当たり前のことなのかもしれません。
宿泊施設業にとって、「目に見えない問題」は決して軽視してはならない大変重要な問題であり、施設に滞在したゲストのリピート率や旅行予約サイト・googleレビュー等の口コミや評判にも影響します。またその影響が売上に反映されることも関係者の方々は重々承知のことと思います。
今後、日本は2020年の東京オリンピックを控え、渡航者が増加の一途をたどる中、世界渡航先ランキングの首位であるバンコクにならい、今よりもっともっとオゾン関連製品の導入が増え、滞在者に質の高い「非日常」と「快適さ」という付加価値を提供し、またオゾンの正しい知識が広く認知されることを切に願います。
最後に。
こうしてオゾンを利用し、常にゲストが快適に過ごせるように気を配っているホテルの評判が気になり、日本国内の旅行予約サイトで調べてみたところ…
いずれのレビュー画像も、2019.02時点。当該ホテルの口コミ・評判のトップページから。
なるほど。 口コミや評判は上々のようです。
是非、この記事をお読みいただいている関係者の皆様も、状況に応じた製品を導入し、正しい施策のもと、貴施設の運営・管理にお役立て下さい。目には見えない「ニオイ」という問題を解決し、リピート率・売上向上という目に見える成果を出していただければ嬉しく思います。
この記事のよくある質問
- この記事の中で紹介されるホテルが使っているオゾン発生器は日本国内で購入できますか?
- 残念ながら、この記事で紹介しているスティックタイプのオゾン発生器は日本国内では販売されていません。似ている形状としては、タムラテコの「ハンディくりん」があります。ただし、ハンディくりんは、オゾン発生量が350mg/hrがあり、無人環境で使用するオゾン発生器なのでご注意下さい。
- 有人環境で常時稼働が可能なおすすめ製品を教えて下さい。
- 有人環境のオゾン発生器で人気がある製品は、業種別「一般家庭」の製品の中からお選び下さい。
- 記事内にあるホテルの情報を教えて下さい。
- 今回、記事内で取り上げているホテルは下記のホテルです。 ホテル名:Trinity Silom Hotel(トリニティ シーロム ホテル) 現地住所:150 Silom Soi 3,Bangkok,10500,Thailand 連絡先:66-2-2315050 スワンナプーム空港及びドンムアン空港から(渋滞がなければ)1時間以内の場所にあり、またバンコク中心地からも徒歩圏内の便利なロケーションです。施設内のWi-Fi速度も不便さを感じることはなく、清潔で快適なホテルのため、観光・ビジネス問わず、バンコクに訪れる際は、滞在先として是非選択肢に入れることをおすすめします。
この記事のQ&Aは、ユーザーからのお問い合わせをもとに随時更新されます。