政府(厚生労働省と農林水産省)は、食品を介した新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染について、次のような見解を示しています(*1、2)。
●生で食べる野菜、果物、海鮮魚類を含め、食品を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は、2020年5月1日現在、報告されていない
農林水産省はさらに、このようなこともいっています。
●一般的な衛生管理が実施されていれば、感染者が発生した施設などにおいて操業停止や食品廃棄などの対応は必要ない
これだけ読むと、食品業界はコロナ禍とは関係ないように感じるかもしれませんが、もちろんそのようなことはありません。
また世界保健機関(WHO)や外国の食品衛生当局は、日本政府と異なる見解を示しています。
また、一般財団法人食品産業センターは、食品業者向けのコロナ対策ガイドラインを作成しています。
そこで食品業者に提案したいのが、オゾンによる食品の殺菌です。
オゾンはコロナを殺菌することがわかっていて、しかもコロナ禍前から食品の殺菌ツールとして使われていました。
食品業者がオゾン殺菌を導入すれば「一歩進んだコロナ対策」をすることになり、消費者に安心を届けることができます。
*1:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou.html#Q1-1
*2:https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/pdf/gl_kyotu.pdf
なぜ食品業者に「一歩進んだコロナ対策」をすすめるのか
コロナ禍において、食品業界は特殊な状況にあります(*3)。
外出や外食の自粛によって巣ごもり消費が増え、家庭用食品の需要が急増し、言葉は悪いのですが「コロナ特需」に湧いている食品業者もあります。
一方で、高級レストランやホテル、デパートに卸す食品や食材をつくっている業者は、売り上げの低迷に悩んでいます。2020年4月の和牛肉の卸売価格は前年同月比3割値下がりし、高級魚も半値以下になることもあります(*4、5)。
コロナ被害を受けている食品業者は、何か手立てを講じる必要があり、「一歩進んだコロナ対策」は解決策の1つになり得ます。
一歩進んだコロナ対策とは「オゾン殺菌」です。
オゾン殺菌の3つのメリットと1つのデメリット
食品業者が食品のオゾン殺菌を導入するメリットは3つあります。
- オゾンは食品を普通に殺菌する(コロナ以外の細菌を殺菌する)
- 「オゾンでコロナ対策をしている」とPRできる(マーケティング効果が得られる)
- コロナ・リスクが万が一顕在化したら、オゾン殺菌は実効力を発揮する
ただ、食品業者のオゾン殺菌導入には、次のようなデメリットがあります。
- オゾン殺菌の装置を導入するコストがかかる
食品のオゾン殺菌は、気体のオゾンや、オゾンを水に溶かしたオゾン水を使いますが、いずれも装置が必要で「それなりの投資」が必要になります。また、加工食品工場の場合、オゾン発生器を置くスペースを確保したり、加工工程を見直したりする必要があります。
つまり、「オゾンでコロナ対策をしている」とPRして売上高が増えても、オゾン殺菌投資を回収できるかどうかは未知数です。
食品のオゾン殺菌について詳しく紹介する前に、1)政府はなぜ、食品を介したコロナ感染はないといっているのか、2)本当に食品感染しないのか、3)オゾンとコロナの関係について解説します。
*3:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200422/mca2004221945022-n1.htm
*4:https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/65092
*5:https://diamond-rm.net/sales-promotion/59927/
政府はなぜ「食品を介したコロナ感染はない」といっているのか
空気中に漂っているコロナは3時間ほどで死滅しますが、段ボールに付着したコロナは1日、プラスチックやステンレスに付着したコロナは7日間生き延びます(*6)。
そうであるならば、素人考えでは、コロナが付着した食品を食べたら感染してしまいそうです。
ではなぜ、政府は「食品を介したコロナ感染は今のところない」といっているのでしょうか。一応「2020年5月1日現在、確認されていない」と断っていますが、「通常の食中毒予防のための一般的な衛生管理が実施されていれば、心配する必要はない」ともいっています(*1)。
コロナ対策では慎重な物言いが多い政府にしては、大胆な見解のように感じます。
*6:http://www.htc.nagoya-u.ac.jp/hokenkanri/kenkotebiki/know/
「モノ→人」感染はない
医師で医療ジャーナリストの森田豊氏は、コロナがモノから人にうつった報告はない、と話しています(*7)。
食品もモノなので、人への感染は考えづらいという立場を取ります。
ただ森田氏は、「モノ→人」感染の可能性がある唯一のモノとして生野菜を挙げます。スーパーの店頭にある生野菜を感染者が触って、それを別の誰かが購入して家で生のまま食べると、接触感染するかもしれないとしています。しかし生野菜も、流水でよく洗うだけで大丈夫だといいます。高齢者や持病のある人も、生野菜を加熱すれば問題ないとしています。
また、九州大学の橋口隆生准教授(ウイルス学)は、コロナは唾液や胃液にある程度弱いので食品は主要な感染経路になりにくい、と述べています(*8)。
橋口氏はさらに、食品は加熱できるものは加熱したほうがよいが、スーパーなどで買うことができる食品について過剰にコロナを警戒することは風評被害になりうる、とも指摘しています。
政府の「食品を介したコロナ感染は今のところない」という見解は、専門家たちのこうした見方に支えられているものと考えられます。
*7:https://news.1242.com/article/220381
*8:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594034/
それでも守らなければならないガイドラインとは
ただ政府は、食品業界に安全宣言を出しているわけではありません。その逆に、次のような点に注意するよう呼びかけています(*1)。
- 製造、流通、調理、販売などの各段階で、食品取扱者の体調管理と小まめな手洗い、アルコールによる手指消毒、咳エチケットは実施するように
- 通常の食中毒を予防するための一般的な衛生管理は徹底するように
- 手指消毒は、作業前、用便後、生鮮の原材料や加熱前の原材料を取り扱ったあとに行なうこと
さらに、一般財団法人食品産業センターは2020年6月に「食品製造業における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」の改訂版を公表しました(*9)。
このガイドラインが食品業者に求める取り組みは次の10点です。
- 従業員に、コロナ予防の基本知識を周知徹底させる
- 換気の徹底
- 飛沫感染と接触感染の防止
- 社会的距離の確保(可能なら2メートル、最低1メートル)
- マスク、ヘアネット、使い捨て手袋、作業着の着用
- 清掃と消毒の取り組み(手指消毒の設備、トイレの蓋を閉めて汚物を流すなど)
- 休憩スペースと社員食堂での取り組み(人数制限、不要な会話をしないなど)
- 更衣室での取り組み(人数制限、不要な会話をしない、換気など)
- 事務所での感染予防対策(テレワークの推進、定期的な清掃など)
- 従業員の感染予防と健康管理(体温測定とその記録、発熱時の自宅待機など)
「食品を介したコロナ感染は今のところない」のに、しかも食品工場などの施設で感染者が発生しても操業停止をする必要がないのに、なぜこうした対応が食品業者に求められるのでしょうか(*2)。
それは、実際は、感染者が出たら操業停止するしかないからです。
東京都でサンドイッチをつくっている工場で2020年9月、78人が感染するクラスター(感染者集団)が発生しました。その工場の食品衛生管理体制は、保健所が問題ないと判断しましたが、工場は操業を止めました(*10)。それは工場全体を消毒するためです。
つまり、「食品→人」感染が起こる可能性が低いという観点では操業停止にする必要はないのですが、他の従業員が感染するかもしれないという観点では、やはり操業停止して消毒しなければならない、というわけです。
したがって食品業者は、このガイドラインを厳格に守る必要があります。
*9:https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/attach/pdf/ncv_guideline-51.pdf
*10:https://www.asahi.com/articles/ASN9T05NMN9SUTIL01P.html
本当に食品感染しない? WHOの見解とは
いくら日本政府が「食品を介したコロナ感染は今のところない」といっても、気になる点があります。
WHOが次のような見解を示しています(*8)。
- コロナウイルス(※)は冷凍状態で安定し、零下20度で最長2年間生存した例もある
- 動物の生肉の表面ではウイルスが生存する懸念があるので、調理時の十分な加熱を推奨する
(※ここでいうコロナウイルスは、新型コロナウイルスとは別のコロナウイルスのことです。ただ、新型コロナウイルスもコロナウイルスの仲間なので、零下20度で最長2年間生存する可能性は否定できません)
さらに、オーストラリアの食品衛生当局は、新型コロナウイルス(以下、再び「コロナ」とします)感染を減らす対策として、生卵を食べないようにする、肉と卵は十分加熱することを挙げています(*8)。
生卵と生肉に感染リスクがあると考えているわけです。
オゾンと新型コロナウイルスの関係
オゾンとコロナの関係を説明します。
オゾンは「O3」と表記される気体で、酸素(O2)と同じように酸素原子(O)だけで構成されます。低濃度のオゾンは自然界にも存在しますが、食品の殺菌に使うような高濃度のオゾンは人工的に酸素からつくります。
オゾンは強い酸化力を持ち、これが強力な殺菌効果を生みます。
オゾンの殺菌効果はとても強く、人が高濃度のオゾンを浴び続けると命の危険がありますが、オゾンは時間の経過とともに自然に酸素に戻り無害になります。
オゾンの特性について詳しくは「オゾンの特徴」をご覧下さい。
コロナへの殺菌効果が証明された
オゾンはその強い殺菌効果から、食品だけでなく、インフルエンザ予防やノロウイルス対策などにも使われてきました。
そしてコロナにもオゾンが威力を発揮するのではないかと期待されるようになりました。
オゾンのコロナ殺菌の研究では、日本は世界で最も進んでいる国の1つです。
奈良県立医科大学などは2020年5月に、オゾンがコロナを不活化することを、世界で初めて証明しました(*11)。不活化とは「死滅させる」という意味です。
続いて9月には、藤田医科大学が、手指消毒に使えるほど低濃度のオゾン水でも、コロナを不活化できることを証明しました(*12)。これも世界初の快挙です。
オゾン水は、気体のオゾンを水に溶かしたものです。オゾンは高濃度では人の健康を害する恐れがありますが、水で薄めて使えば安全です。
このようなエビデンス(証拠、根拠)が示されたことから、オゾン(気体)もオゾン水も、コロナ対策として使われるようになりました。
大阪のある病院は、奈良県立医科大学の発表を受け、100台のオゾン発生器を購入しました(*13)。
*11:http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/press_2.pdf
*12:https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv0000007fdg.html
*13:https://ainomiyako.net/2020/05/29/20200529_n1/
食品をオゾン殺菌するマーケティング効果について
それではもう一度、食品業者が、自社の食品をオゾンやオゾン水で殺菌するメリットを考えてみましょう。
先ほど、メリットとして以下の3つを挙げました。
- オゾンは食品を普通に殺菌する
- 「オゾンでコロナ対策をしている」とPRできる
- コロナ・リスクが万が一顕在化したら、オゾン殺菌は実効力を発揮する
1番目の、オゾンの通常の殺菌効果については、あとで解説します。
3番目の、コロナ・リスクの顕在化とは、今は確認されていない「食品→人」感染が、確認された場合を想定しています。
もしWHOやオーストラリアの食品衛生当局が懸念するように、生肉や生卵を食べた人がコロナ感染したら「食品→人」感染が疑われることになります。
そうなれば、オゾン殺菌している食品は感染リスクが著しく低下するはずなので、消費者に受け入れられるでしょう。
ただ現段階では「食品→人」感染は確認されていないので、今のところ3番目はオゾン殺菌のメリットには数えづらいでしょう。
ここで注目するのは2番目の「オゾンでコロナ対策をしている」ことをPRできるメリットです。ウィズコロナ社会において、食品業者が自社の食品をオゾン殺菌すれば、マーケティング効果が得られるかもしれません。
なぜマーケティング効果が得られるのか
「食品→人」感染は今のところない、とする日本政府の見解を、日本の食品業者が信じることは正しいことなので、経営者が「自社の食品を、わざわざコストをかけてオゾンで殺菌する必要はない」と判断するのは妥当です。
ただ、食に関心がある消費者は、WHOが生肉の感染リスクに言及していることを知っています。そのような消費者は、コロナ対策が取られている食品かどうか気になるはずです。
もし、ある食品業者が、他社に先駆けてコロナ対策でオゾン発生器を導入したら、食の安全に敏感な消費者に高く評価されるでしょう。
マーケティングでは、ターゲットとなる客層を定め、その人たちが買いたくなるような商品を開発したり、キャンペーンを展開したり、広告を出したりします。
例えば、「国産ジャガイモを使ったポテトチップス」を開発するより「北海道産ジャガイモだけを使ったポテトチップス」をつくったほうが、消費者受けがよくなります。なぜなら多くの消費者は、北海道のジャガイモは国産ジャガイモのなかで最もおいしいと思っているからです。本当は、低級ジャガイモを使った北海道産ポテトチップスより、高級ジャガイモを使った国内産ポテトチップスのほうがおいしいかもしれません。しかし、消費者の反応を考えると「北海道推し」は、ポテトチップス・マーケティングでは理にかなっているといえます。
同じことは、ウィズコロナ下の食品業界についてもいえ、消費者はコロナ対策済みの食品を求めています。
なぜなら「食品→人」感染について政府は、次のように述べているからです。
●(再掲)生で食べる野菜、果物、海鮮魚類を含め、食品を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は、2020年5月1日現在、報告されていない
政府は「『食品→人』感染はない」とは、断言していないのです。
オゾン殺菌を導入した食品業者は「『食品→人』感染が完全に否定されていないから、うちの会社ではオゾン発生器を導入しました」とPRすることができます。
そして、仮に将来、「食品→人」感染が完全に否定されたとしても、食品をオゾン殺菌するメリットはあります。
オゾンは「食品を普通に殺菌(コロナ以外の細菌を殺菌)」します。
その他の殺菌剤が持つ欠点がオゾンにはない
「食品とオゾンの科学」(建帛社)の著者で、食品・微生物研究所所長の内藤茂三氏は「近年、オゾン殺菌の利用活発になっている。食品工場、病院厨房、レストラン厨房など、幅広い分野で活用されている」と指摘します(*14)。
オゾンは大腸菌に対して殺菌力があるだけでなく、耐性菌にも効果を発揮します。耐性菌とは、既存の殺菌剤が効かなくなった菌のことです。またオゾンは、乳酸菌も殺菌します。乳酸菌は厨房では、食品を変敗させるやっかいものです。変敗とは、微生物の影響で食品の風味が悪くなる現象です。
オゾンは食品添加物にも認定されています。
また、次亜塩素酸ナトリウム、エチルアルコール、ヨードホール、酢酸などのその他の既存の殺菌剤は、食品の殺菌に向かないことがあります(*15)。
次亜塩素酸ナトリウムは、長年使っていると、先ほど紹介した耐性菌をつくってしまいます。
エチルアルコールを製パン工場で大量に使うと、エチルアルコールを栄養源(エサ)にする真菌が発生することがあります。
ヨウ素を主原料とするヨードホールは、レトルトの液状スープを流通過程で膨張させることがあります。これは乳酸菌が液状スープのなかで繁殖してしまい、ガスが発生するためです。
酢酸を消毒剤として食品工場で使うと、カビの増殖を招くことがあります。
オゾンやオゾン水は、既存の殺菌剤とは異なる方法で殺菌するので、上記の欠点が出ません。オゾンは、細胞の細胞壁を破壊して核を溶かすので、細菌を徹底的に叩くことができるからです(*16)。
野菜の表面の細菌を除去する
静岡県立大学の研究チームは、オゾンで野菜を洗浄したときの、細菌の死滅量を計測しました(*17)。収穫された野菜の鮮度が落ちるのは、野菜に付着している細菌が腐敗や乾燥を招くためで、細菌の除去は生産者や流通業にとって重要課題になります。
研究チームは、ニガウリ、ミニトマト、ニンジン、ピーマン、ナスを使って、「オゾン洗浄+オゾン水洗浄」と「水道水のみでの洗浄」の比較をしました。両方の洗浄を別々に行って、野菜の表面の細菌の数がどれくらい減るのか調べました。
すべての野菜で「オゾン洗浄+オゾン水洗浄」のほうが、細菌がより多く減りました。ピーマンとナスについては、「オゾン洗浄+オゾン水洗浄」で細菌は完全に消えました。
*14:https://www.kenpakusha.co.jp/np/tsukushi/20190101009/
*15:http://www.aichi-inst.jp/shokuhin/other/shokuhin_news/s_no20_01.pdf
*16:http://www.rijapan.co.jp/ozone/knowledge.html
*17:https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1809/chosa01.html
まとめ~消費者の心をつかむ
政府は、コロナの「食品→人」感染は、ほぼないとみているようです。政府見解は、多くの専門家の意見を反映しているので、「食品→人」感染を恐れる必要はないのでしょう。
しかし、「食品→人」感染が完全に否定されたわけでもありません。
そうなると、食に関する意識が高い消費者は、「食品→人」感染対策を講じた食品を探したくなります。
コロナ禍で打撃を受けている食品業者には、このニーズをビジネスチャンスに変えたいところです。
それには自社の食品をオゾンやオゾン水で殺菌する方法は有効なはずです。なぜなら、オゾンがコロナを殺菌することは証明済みだからです。
マーケティング用語を使えば、オゾン殺菌した食品は「消費者への訴求力」があります。
食品のオゾン殺菌は「売らんがため」の施策ではありません。食品のオゾン殺菌は、コロナ禍前から実績があります。コロナと関係なく、オゾン殺菌は商品(食品)の「付加価値」になります。
オゾン殺菌の「訴求力」と「付加価値」が、オゾン導入の「コスト」を上回ることがわかれば、試す価値は十分あるのではないでしょうか。