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論文「水中農薬の塩素およびオゾンによる分解について」を超平易に解説

オゾンに関する学術論文を超平易に解説します。
今回は大阪府公害監視センターの奥村為男さんが1992年に発刊された水環境学会誌に投稿した「水中農薬の塩素およびオゾンによる分解について(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/15/1/15_1_62/_pdf)」を紹介します。

記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。

超ざっくりいうと

論文「水中農薬の塩素およびオゾンによる分解について」を超平易に解説

まずはこの論文を、超ざっくり解説します。
著者の奥村さんは公害監視という仕事柄、水道水に混入した農薬を取り除くことに関心を持っています。
そこで、オゾンと塩素では、どちらのほうがより効果的に「農薬に汚染された水道水」を浄化できるか比べることにしました。
なんと135種類の農薬について比較しました。
その結果、オゾンのほうが浄化効率が高いことがわかりました。

もう少し具体的に紹介すると

もう少し具体的に紹介すると

それでは論文の内容をもう少し具体的に紹介します。

塩素による農薬汚染水道水処理の結果

塩素による農薬汚染水道水処理の結果

135種類の農薬で、135種類の農薬汚染水道水をつくり、そのすべてを塩素で処理してみました。
135種類の農薬のうち、ホレート、ダイホネート、ジスルホトン、エチオフェンカルブ、CDECは2分以内にほぼ全量分解できました。
「分解」とは、無害化した、という意味です。
135種類の農薬のうち、有機リン系農薬は40種類ありましたが、うち33種類の農薬を分解することができました。分解できた農薬の共通点は、チオホスホリル基またはスルフィド基を有することでした。それに対し、ホスホリル基を有する有機リン系農薬7種類は、塩素では分解できませんでした。
有機塩素系農薬42種類は、塩素では1種類も分解できませんでした。
トリアジン系農薬6種類では、プロメトリンとシメトリンの2種類は分解できましたが、他の4種類は分解できませんでした。
酸アミド系農薬7種類ではトリクラミドとナプロパミドの2種類は分解できましたが、他の5種類は分解できませんでした。
カルバメート系農薬11種類では、エチオフェンカルブのみ分解できました。
ウラシル系農薬2種類、チオカルパメート系農薬1種類、ジオカルバメート系農薬1種類は、いずれも分解できました。
ジニトロアニリン系農薬1種類、ジニトロ系農薬1種類、フタルイミド系農薬1種類、ジフェニルエーテル系農薬4種類は、いずれも塩素では分解できませんでした。

このことから以下のことがわかりました。

  • 半減期が100時間以内の農薬は塩素処理で分解できる
  • 塩素で分解できるのはクロロピリホス、ダイアジノン、MEP、プリダフェンチオン、イソプロチオラン、ベンチオカーブ、モリネート、ピペロホス、シメトリンなど
  • 塩素で分解できないのはBPMC、MIPC、PHC、フルトラニル、IBP、アトラジン、CAT、MBPMC、オキサジアゾン、TCTP、X-52など

オゾンによる農薬汚染水道水処理の結果

オゾンによる農薬汚染水道水処理の結果

135種類の農薬汚染水道水を使い、オゾンで処理してみました。
有機リン系農薬の分解能力は、ほぼ塩素と同じでした。
有機塩素系農薬では、クロロネブ、メトキシクロル、DCIP、アルドリン、ヘプタクロル、ビンクロゾリンを分解することができました。これらは塩素では分解できませんでした。
トリアジン系農薬では、塩素と同じ結果となりました。
酸アミド系農薬では、塩素で分解できたトリクラミドとナプロパミドは、オゾンでも分解できました。そしてフルトラニルとメプロニルは、塩素では分解でませんでしたが、オゾンでは分解できました。
カルバメート系農薬では、塩素で分解できたエチオフェンカルブは、オゾンでも分解できました。そして塩素では分解できなかったNACを、オゾンは分解しました。
ウラシル系農薬への効果は、塩素と同じでした。
塩素で分解できなかったジニトロアニリン系とジニトロフェノール系の農薬も、オゾンで分解できました。
ジフェニルエーテル系農薬はすべて分解できませんでした。これは塩素も分解できませんでした。
チオカルパメート系農薬とジオカルバメート系農薬は、塩素同様、オゾンでも分解できました。

オゾンの「勝ち」

オゾンの「勝ち」

奥村さんは「オゾンにより分解する農薬の数が、塩素によるものより多かった」そして「塩素で分解できて、オゾンで分解できない農薬は存在しなかった」と結論づけました。
オゾンの勝ちです。

まとめ~オゾンの力を信じる人たちの成果

まとめ~オゾンの力を信じる人たちの成果

この論文が発表された1992年ごろは、浄水といえば塩素処理が主流で、オゾンによる浄水はまだ「近い将来に導入が予定されている」(奥村さん)といった程度の存在でした。
この論文のような実験や研究がたくさん行われたことでオゾンの力が認知されるようになり、今日の「浄化といえばオゾン」の評価が確立したわけです。

この論文は以下のURLで全文を読むことができます。

論文名水中農薬の塩素およびオゾンによる分解について
著者大阪府公害監視センター 奥村 為男
リンクhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/15/1/15_1_62/_pdf

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