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論文「オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用」を超平易に解説

オゾンに関する学術論文「オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf/-char/ja)」を超平易に解説します。

オゾンに関する学術論文を超平易に解説します。
今回は2000年の日本集中治療医学会雑誌に掲載された「オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用」を紹介します。著者は以下の3名です。

  • 静岡県立大学の赤堀幸男さん
  • 同大学の村上篤司さん
  • 静岡済生会総合病院の星昭二さん

記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。

超ざっくりいうと

論文「オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用」を超平易に解説

まずはこの論文を、超ざっくり解説します。
病院の入院患者が、病院内で発生した細菌に感染してしまうことを院内感染といいます。これはいわば「病気を治す場所で新たな病気にかかる」ことであり、あってはならない重大事態です。
院内感染の予防法では手洗いが有効とされていますが、すべての菌に効く殺菌剤はなかなかありません。
そこで著者たちが注目したのが、オゾンを水に溶かしたオゾン水です。
論文では「オゾン水は手指洗浄用として最適であり、有効な院内感染対策方法」と断言しています。

もう少し具体的に紹介すると

もう少し具体的に紹介すると

それでは論文の内容をもう少し具体的に紹介します。

院内感染と課題

院内感染と課題

論文で注目しているのは、病院のなかでも集中治療室という場所です。
ICU(集中治療室)やCCU(心臓血管疾患集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)などと呼ばれる集中治療室は、入院患者のなかでも特に症状が重い人たち用の病室です。ここでは一般的な病室よりも手厚い治療と看護が提供されます。
集中治療室にいる患者には、細菌に感染しやすい特徴があります。病気が重いので細菌に対する抵抗力がないのです。そのため院内感染が起きたとき、真っ先に被害を受けるのが集中治療室の患者たちです。

病院が警戒している細菌は、MRSAやVREなどの多剤耐性菌と呼ばれている細菌です。なぜ警戒しているのかというと、多剤耐性菌による院内感染には、有効な治療法が確立されていないからです。
治療法がないので、病院としては院内感染対策を強化するしかありません。ところが数ある多剤耐性菌のすべてに効果を発揮する殺菌剤はありません。
しかしオゾン水ならこの問題を一気に解決できます。この論文では、オゾン水の殺菌効果、特徴、使用上の注意を解説しています。

オゾン水とは

オゾン水の特徴

オゾンは、空気に無声放電という電気的な処理を加えるとつくることができます。オゾン水は、精製水にオゾンを強制的に溶解させてつくります。
気体のオゾンはしばらくすると酸素に変わってしまい、殺菌効果がなくなってしまいます。しかしオゾン水にすれば、オゾンが減るスピードが緩やかになります。
それでも著者たちが実験したところ、ガラス容器にオゾン水を保管しても、わずか40分でオゾン濃度が半分に減ってしまいました。これでは、病院の外の施設でオゾン水をつくって病院に運ぶうちに効果が薄まってしまいます。
そこで著者たちは、オゾン水は病院内でつくる必要があると提案しています。
オゾン水を詳しく知りたい方は「オゾン水の特徴」もあわせてご覧下さい。

毒性に注意

毒性に注意

オゾンは殺菌効果が高い代わりに、高濃度になれば人への毒性があることで知られています。したがって気体としてのオゾンの取り扱いには、漏洩、容器の気密性、容器の劣化に注意しなければなりません。
しかしオゾン水にすれば、オゾンが蒸発することはほとんどないので安全に取り扱うことができます。しかも気体状態のオゾンよりオゾン水のほうが殺菌効果が高くなります。
オゾン水で病院内を殺菌することは理にかなっているわけです。

オゾン水で殺菌するときの注意点

オゾン水で殺菌するときの注意点

オゾン水で病院内の細菌を殺菌するときの注意点は次のとおりです。

  1. オゾン水のオゾン濃度が低いと完全に殺菌できないの必要最低限のオゾンを用意する必要がある
  2. 細菌以外の汚染物質によってオゾン水の殺菌作用が落ちることがあり、特に還元性物質という物質が存在するとオゾン水の殺菌能力は激減する
  3. 細菌の種類によって殺菌効果が変わることはない(満遍なく効く)
  4. 細菌の量の9倍のオゾンが必要で、殺菌時間は30秒でよい

MRSAとVREへの殺菌効果

MRSAとVREへの殺菌効果

病院の院内感染で深刻な被害をもたらすのは、多剤耐性菌のMRSAとVREです。しかし適切な濃度のオゾン水を使えば、どちらの菌も5秒で殺菌できることが確認できました。

オゾン水を病院でどのように使うか

オゾン水を病院でどのように使うか

院内感染は「医療者の手」を介して拡大することから、オゾン水で手洗いすると感染対策になります。実験の結果、次のことがわかりました。

  • オゾン濃度4mg/Lのオゾン水1Lで手を30秒洗うとよい
  • 血液などの還元性物質が手に付着しているとオゾンが効果を発揮しないので、その場合は血液などを洗い落としてからオゾン水で手を洗う

オゾン水救急装置は病院内に設置しなければなりません。

オゾン水はどのように細菌を殺すのか

オゾン水が細菌を殺すメカニズムは次のとおりです。

  • 細胞の表面膜の異常を引き起こし、細胞全体を異常状態に陥れる
  • 細胞の内容物が漏れ出て崩壊する
  • 細胞を構成する核酸を損傷する

これらの作用により、細菌は死滅します。オゾン水で殺菌したMRSAやVREを電子顕微鏡でみたところ、形をなしていませんでした。

MRSAやVREを顕微鏡でみた様子その①

ところが細菌をオゾン水にさらすと、以下の写真(Fig.7)のように崩壊します。

オゾン水による細菌の崩壊現象

引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf/-char/ja

オゾン水の安全性

オゾン水の安全性

少し残酷な話ですが、著者たちはオゾン水の安全性を確認するために、濃度20mg/Lのオゾン水をウサギに点眼しました。点眼とは目薬のように目に差すことです。
また同じ濃度のオゾン水100mlをウサギに飲ませたり、20mlを直接お腹のなかに入れたり、3mlを筋肉に注射したりしました。
結果は「異状なし」でした。

まとめ~まずは手術室から

著者たちは院内感染を根絶するには、病室全体を殺菌する必要があると指摘しています。しかしそれをすぐに実施するのは現実的ではないので、まずはオゾン水で手洗いすることを推奨しています。

資料名オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用
著者静岡県立大学 赤堀幸男
静岡県立大学 村上篤司
静岡済生会総合病院 星昭二
リンクhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf/-char/ja

院内感染については、別記事「オゾンによる院内感染対策について」でもまとめていますので、あわせてご覧下さい。

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