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論文「養液栽培におけるPythium根腐病の発生生態と防除」を超平易に解説

オゾンに関する学術論文を超平易に解説します。
今回は大阪府環境農林水産総合研究所の草刈眞一さんが2011年の植物防疫第65巻第2号に投稿した「養液栽培におけるPythium根腐病の発生生態と防除(http://www.jppa.or.jp/shiryokan/pdf/65_02_12.pdf)」を紹介します。
記事の最後にこの文献へリンクしていますので、是非ご覧下さい。

超ざっくりいうと

養液栽培におけるPythium根腐病の発生生態と防除

まずはこの論文を、超ざっくり解説します。
論文のタイトルにあるPythiumは「腐敗カビ」のことです。腐敗カビが植物に感染すると、植物の根が腐る根腐病を引き起こします。

腐敗カビは、養液栽培をしている野菜に甚大な被害を及ぼします。収穫最盛期のキュウリやトマトを数日で枯れ死させるほどの毒性を持ち、さらに養液栽培をしている「野菜工場」を全滅させる危険もあります。
養液栽培とは、栄養分を含んだ培養液だけで野菜を栽培する方法で、土壌を使わないことから水耕栽培と呼ばれることもあります。

そこで著者は、腐敗カビから養液栽培を守る方法を探すことにしました。
オゾン、紫外線、ろ過、熱、金属銀剤、光触媒の6つの方法で殺菌を試みました。果たしてどの方法が最も効果的に腐敗カビを殺すことができたのでしょうか。

もう少し具体的に紹介すると

もう少し具体的に紹介すると

それでは、もう少し深く論文の中身に踏み込んでいきましょう。

研究の背景

研究の背景

著者が腐敗カビによる野菜の根腐病対策の研究に着手した背景には、養液栽培が拡大してきたことがあります。
養液栽培は、野菜が養分を吸収するスピードを制御できるので「意のまま」に育てることができます。また、戸外の土壌での栽培より、野菜が早く育つこともわかっています。
このように利便性が高いことから、養液栽培の栽培面積は、論文執筆当時(2011年)、年10%増の割合で増えていました。10ヘクタール以上ある野菜工場も登場しています。
ところが腐敗カビによる被害が深刻化してきたため、著者が対策に乗り出したわけです。

腐敗カビは養液栽培だから恐い

腐敗カビは養液栽培だから恐い

腐敗カビは、戸外の土壌での栽培では、野菜の「苗」にしか被害をもたらしません。植物が成長すれば、腐敗カビと闘う力が備わるのでそれほど恐れる必要はありませんでした。

腐敗カビは、養液栽培だからこそ問題になります。
腐敗カビは培養液に浸かっている植物の根に効率的に感染する能力があり、しかも根に付着すると1~4時間という速さで根のなかに侵入していきます。
感染当初での発見が難しいので応急処置を取りづらく、それで一気に野菜工場内に蔓延してしまいます。
新しい農業が生まれたことで発生した新しい難題といえます。

農薬は使えないので培養液を殺菌する

農薬は使えないので培養液を殺菌する

戸外の土壌の場合、農薬を使った腐敗カビ対策が可能です。しかし、養液栽培では培養液に農薬を投入したときの安全性が証明されていないので、農薬は使えません。
そこで著者は、培養液を殺菌することにしました。

それでは次に、先ほど紹介した、オゾン、紫外線、ろ過、熱、金属銀剤、光触媒の6つの殺菌法のし方と効果を解説します。

オゾンの殺菌法と効果

オゾンの殺菌法と効果

オゾンを使った殺菌法には、オゾンガスを培養液にさらす方法と、オゾンを溶かした水を培養液に混ぜる方法の2種類があります。
オゾンガスを使った方法は、100Lの培養液を濃度50ppmのオゾンガスで毎分30Lのスピードで殺菌します。すると30~60秒で培養液中の腐敗カビを殺菌できます。
非常に効率がよく、腐敗カビだけでなく青枯病菌や萎凋病菌にも効果を発揮します。
またオゾン発生器(オゾン発生装置)は多数販売されていて、調達のしやすさもメリットです。

紫外線の殺菌法と効果

紫外線の殺菌法と効果

培養液に紫外線を照射することでも、腐敗カビを殺菌できます。紫外線はさまざまな微生物に対応でき、使用する機器が単純というメリットがあります。
ただ紫外線は、腐敗カビ自体に当てなければ効果が出ません。すでに野菜の根のなかに入ってしまった腐敗カビは退治できないというデメリットがあります。
紫外線を野菜に当てすぎてしまうと、野菜の養分が減る養分欠乏症が起こることがあります。
そこで、紫外線とオゾンを組み合わせた殺菌装置も開発されました。オゾンの力を借りることで、殺菌を安全に確実に行おうというわけです。

ろ過、熱、金属銀剤、光触媒の殺菌法と効果

ろ過、熱、金属銀剤、光触媒の殺菌法と効果

ろ過、熱、金属銀剤、光触媒の殺菌法はまとめて紹介します。

ろ過の殺菌法は、培養液を砂の層に流して腐敗カビを取り除きます。
熱による殺菌法は、培養液を50~60℃に温めて腐敗カビを殺します。この方法は、熱を加えて熱を冷ますという2つの工程が必要なため、効率の悪さが欠点です。
先ほど、養液栽培では農薬は使えないと解説しましたが、唯一、金属銀剤という農薬だけは安全性が確認されています。金属銀剤を培養液に浸すと、銀イオンが出てきて腐敗カビを殺菌します。ただ、金属銀剤を培養液に16時間以上浸けておかなければならず、効率がよいとはいえません。またすべての菌に対応できるわけではありません。
光触媒とは酸化チタン、酸化タングステン、銀化合物といった物質の総称で、光触媒に光が当たると化学反応を起こす性質があります。その科学反応で腐敗カビを殺菌するのが、光触媒法です。

まとめ~オゾンの優位性はありそう

まとめ~オゾンの優位性はありそう

残念ながら著者は、6つの殺菌法の効果をランクづけしていません。最も効率よく腐敗カビを殺す方法は、この論文ではわかりません。
ただ著者は、オゾン、ろ過、光触媒のデメリットについては言及していません。一方で紫外線、熱、金属銀剤については、デメリットを紹介しています。
オゾンは「合格点」と考えることができそうです。

この論文は以下のURLで全文を読むことができます。

論文名養液栽培におけるPythium根腐病の発生生態と防除
著者大阪府環境農林水産総合研究所 草刈眞一
リンクhttp://www.jppa.or.jp/shiryokan/pdf/65_02_12.pdf

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