新型コロナウイルス(以下「コロナ」)の陰性証明書を取得するのに何故リスクが?と、意味がわからないと思う人もいるかもしれませんが、決して釣りタイトルや不真面目な記事ではありません。
特に、従業員や関係者にコロナの陰性証明書なるものの取得を要請している企業などは、このリスクについてもよくご理解いただければと思います。
PCR検査を受けるケース
コロナのPCR検査を受けるケースは主に次の3パターンあります。
- 純粋にコロナに感染しているかどうか知りたい(個人)
- 海外渡航のため陰性証明書が必要(個人・法人)
- 感染が疑われ、医師会や診療所、あるいは保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター(※)」などに相談をした結果、必要に迫られPCR検査を受ける(個人)
※保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」は、地域により名称が異なることがあります。
本記事では、上記の3パターンの中から「海外渡航のため陰性証明書が必要」について、実際に著者が陰性証明書を発行している民間医療施設でPCR検査を受けた事実をもとに、詳しくそのリスクを解説します。
陰性証明書は多くの人を勘違いさせる
そもそも、PCR検査は、コロナの感染者を100%正確に「陽性」と判定できるわけではありません。
感染していても、次のような場合は陰性と判定されることがあるからです。
- 体内のウイルス量が少なかったとき
- 検体の採取がうまくいかなかったとき
検査は検体を採取した時点のウイルス量をもとに判定しています。採取した時点のウイルス量が少なくて検出できない可能性や、検査中(後述)、あるいは検査結果を待っている間に感染する可能性もあります。
その場合、検査結果は陰性でも、本当は感染していることになります。
もちろん、だからと言ってPCR検査に意味がないわけではありません。PCR検査自体の意味は大いにあります。
ただし、陰性を証明する「陰性証明書」なるものは実に馬鹿げていると言わざるを得ません。なぜなら、「陰性」であることを「証明」することは不可能だからです。
PCR検査で得られるものは、「医学的証明」ではなく、まぁ、せいぜい「医学的説明」なのです。
にもかかわらず、「医学的に、まぁ、説明できるレベル」を「証明」としてしまうものですから、いろんなところで、いろんな人たちが勘違いするわけなんです。
海外渡航者が必要とする英文の陰性証明書を発行する施設のPCR検査は超高額
本記事の執筆時点(2020.11.19)では、かなり広範囲の諸外国に入国制限があり、本来であれば日本人の場合、ノービザで入国できる国も、ビザが必要になったり、多くの国が「陰性証明書」を必須にしています。
また、日本語の陰性証明書では現地の係官が理解できないため、英文の陰性証明書が必要になります。
PCR検査の実施、日本語の陰性証明書に加えて英文での陰性証明書を発行している民間医療施設をインターネットで検索してみます。
オーガニックの検索結果(非広告)、広告など総合的によく見てみると、3施設の露出が目立ちます。
この3つの施設について、ざっくり調べた結果を表に示します。
施設A | 5万円 | 料金に含む | +1万円 | 多い | 非常に高い | 速い・丁寧 |
---|---|---|---|---|---|---|
施設B | 4万円 | 料金に含む | 無料で発行可 | 普通 | 高い | 速くはないが丁寧 |
施設C | 3万円 | 料金に含む | +1.5万円 | 少ない | 普通 | 遅いが丁寧 |
PCR検査費用は、一時(3〜8月頃)と比較すると、だいぶ下がってきていますが、英文の陰性証明書を発行している施設の検査費用は以前強気のまま高額な検査費用となっています。
民間医療施設におけるPCR検査費用がどんどん安くなっているなか、何故、英文の陰性証明書を発行している施設の価格は変わらず高額なのか、あるいは何故高額にもかかわらず今日現在も多くの人に選ばれているのか。
理由は察しがつきます。
それは、対象が主に法人だからです。
そして、今の時期、英文の陰性証明書がほしい人なんて、ほとんどのケースでビジネス上の海外渡航目的です。
検査費用は経費で落とせますし、施設側もその事情をよく理解しているため、「領収書の発行承ります」「○人以上の団体予約の場合、請求書払い可」などと積極的にPRしています。
著者は、3施設のなかでも、(せっかくですから)もっとも露出が高いAクリニックを選び、実際にPCR検査を受けてきました。
行ってきました〜PCR検査当日
検査当日を迎えるまで「ご一緒にポテトはいかがですか」と満点スマイルのマクドナルドよろしく「ご一緒にインフルエンザワクチンの接種はいかがですか?」というメールが何度か届きました。(もうこのあたりから逆にワクワクしていました)
山手線の駅から徒歩数分のAクリニック。
当日には、ご丁寧に写真付きで駅からのアクセス方法も送られてきました。(素晴らしいオペレーション)
おかげさまで、まったく迷うことなくAクリニックが入っている都内某ビルに到着。
<PCR検査の種類について>
はじめは国立感染症研究所の検体採取マニュアルには、PCRの検体は喀痰や、鼻咽頭ぬぐい液(スワブ)と指定されていましたが、数ヶ月前から唾液による検体採取が鼻咽頭ぬぐい液と同等の検査精度をもつ可能性を示し、今日現在は、厚生労働省も唾液によるPCR検査を認めています。
※海外渡航目的の場合、国にもよりますが「鼻咽頭ぬぐい液(スワブ)」の方をやっておいたほうが間違いありません。
Aクリニックでは「鼻咽頭ぬぐい液(スワブ)」「唾液」どちらもやっているとのことだったので、私はあえて痛そうな鼻咽頭ぬぐい液(スワブ)の方を希望しました。
「目をつぶっていた方が、痛みが少し緩和される」「確かな強度を持った異物が鼻の奥に侵入し、わさびを食べたときのつーんとした感覚を数十倍にしたような衝撃が襲う」「鼻の奥で動く棒によって、どこか大切な場所を削り取られるような激しい痛みが加わる」「目など開けられるわけもなく、固く閉じたところで痛みが緩和されている気もしない」
などなど、感じ方は人それぞれのようですが、もはや痛くないわけないよなと覚悟をしながら検査に臨みます。
↓テレビでよく見るこんな感じで鼻の奥の方でグリグリとやられるのでしょうか。少しドキドキしながら受付に向かいました。
問題だらけのPCR検査
受付で名前を伝え、予約を確認すると、「あちらのテーブルでこちらの内容を確認して、ご記入・同意のご署名お願いします」と丁寧に案内されます。
このときによく辺りを見回すと、簡易的な小部屋がたくさん作られていて、どうやらその小部屋で検査を行っているようだな、と。
同意書の確認・署名が終わり、提出すると数分後に名前を呼ばれ「○番のお部屋にお入りになり、イスに座ってお待ちください」と案内されるので、指定された小部屋に向かい、入ります。
問題はここから先です。
このドアを来院者が自ら開けるわけですが、検査を受けに来た方の中に感染者がいたら、普通に感染ポイントになりますね。
たとえば、1時間に1回程度など、定期的にアルコール消毒するなどの対策をしている可能性はありますが、少なくても私が見ていた間に複数人の人が次から次へと消毒されていないドアレバーを触っていました。
小部屋の中は1.5畳ほどのスペースになっていました。
指示されたとおり、イスに座って待っていると、1分も経たない内にカーテンの向こうから検査担当の方がやってきて、カーテンが開くのですが、なんとその方の装備は一般的な不織布マスクのみです。
通常、スワブ検査の実施は、医師、看護師、臨床検査技師等に限られており、また感染リスクもあるため、マスクやガウンなどの防護具を着用して行われます。
それが不織布マスク1枚のみです。(白衣は着用していました)
これは、衝撃すぎました。。
さすがにそれはないでしょと思いつつ、そのまま検査を受けます。
そのときのやり取りは↓こんな感じでした。
担当者
「あっ、どうも、こんにちわ〜」
私
「こんにちは。よろしくお願いします」
担当者
「今から検査をするために鼻にこれ(見せながら)を入れるんですが、もう全然奥の方には入れませんので、痛くもないし、すぐ終わりますので」
私
「(拍子抜けした感じで)えっ、あっ、そうなんですか。はい、わかりました」
担当者の方が私の鼻の穴(しかも、かなり手前に)にあの長い綿棒のようなものをチョコンと接触させる。
担当者
「はい、終わりました〜」
時間にして1〜2秒。。
鼻の奥をグリグリやられることもなければ、当然1%の痛みもあろうはずがありません。
私は心の中で「えっ、早っ!それはいくらなんでもテキトー過ぎでしょ〜」と思いつつも、お礼を伝え、小部屋から退出しました。
正直、この検査方法は検査になっていないというか、ザルすぎます。
この小部屋で会話した際、担当者の方と私の顔はおそらく30〜40cm程度しか離れていませんでした。(アクリル板などもありません)
これはドアレバーより強烈な感染ポイントです。
顔をあんなにも近づけて会話をすれば、私がこのときコロナに感染していた場合、担当者も感染する可能性が高いですし、逆もまた然りです。
いずれにしても無事に検査を終え、検査結果についての案内を聞き、料金の支払いです。
私
「カードは使えますか?」
受付の方
「はい、お支払い方法はいろいろ使えます(満点スマイル)」
決済方法が増えると、売上が増えるあの法則ですね、わかります。
そんなこんなで、私は無事に支払いを終え、領収書を受け取り、Aクリニックをあとにします。
このとき辺りを見回すと私以外にお客さんがたくさんいて、クレジットカードで5〜6万円の決済が次から次へと行われており、まさに「ビジネス」を肌で感じました。
検査結果と新型コロナウイルスの陰性証明書
数日後、指定された日時に検査結果と(陰性であれば)陰性証明書を受け取りに再度Aクリニックへと足を運びました。
結果は陰性(仮に検査を受けた人間が陽性だった場合、あの検査方法でちゃんと陽性反応が出るのだろうか)だったため、無事に陰性証明書を受け取ることができました。
ちなみに、和文の方はフォントサイズも大きめでざっくりとした感じですが、英文の方は結構しっかりと各項目について記載されており、和文と英文の証明書では本気度が違うなという印象でした。
※この記載項目に漏れがあると現地の空港で入国拒否される可能性があるため、発行元の医療施設側もかなり慎重なのだと思います。
関空到着の17人、集団感染か(2020/11/18)
出国前の陰性証明所持インドネシアから同じ航空便で関西空港に到着した10~20代の女性17人が、新型コロナウイルスの抗原検査などで陽性となっていたことが18日、厚生労働省や大阪府への取材で分かった。集団感染とみられる。
いずれも陰性証明書を持っていた。出国前の検査後に陽性になった可能性もあるが、厚労省は「同じようなケースが続けば、陰性証明の信頼性を確認する必要性が出てくる」としている。
17人はジャカルタからの直行便で11日に到着。広島県に向かう50人程度の技能実習生の一部とみられ、無症状だった。大阪府内の宿泊施設で療養している。
共同通信
どうやらこの問題は日本だけではないようです。
まとめ〜高額PCR検査で私が思ったこと
あぁ、なるほど。
英文の陰性証明書を求めている人は自分が感染しているか否かではなく、純粋に陰性証明書がほしいのだな、と。
そして、言ってみれば、Aクリニックはそのニーズをほぼ完璧に満たしているわけです。
このクリニックの口コミや評判が良いのも理解できました。何故なら、高額ながらも「海外渡航に使用できる英文の陰性証明書がほしい」というニーズを満たしているからです。
「医療施設における適切な検査」というより、これはほぼ間違いなく、「陰性証明書ビジネス」と呼べるものです。
PCR検査を実施している民間医療施設の担当者は1日でかなりの人数に接しています。
あのような検査態勢では、PCR検査を行う担当者が感染している可能性も低くなく、検査時にその担当者の飛沫を浴びることを考えれば、もともと感染していない人がそこで感染する可能性も十分にあり得ます。
検査当日の検体からは感染が確認できなくても、感染した直後に海外渡航しているケースも少なくないでしょう。
仕事のため、日本を出国し、海外へ。その後、日本に帰国して、陽性だったことを知ったとき「やはりこの時期に海外出張はリスクが高かったか、、、」ではなく、実は日本出国直前に感染していたのかもしれないと、その可能性を考えれば、一体何のための検査なのかと思いませんか?
仕事が大事なことは私も十分理解しています。
しかし、経営者様や企業の責任者様には「自社で感染者を出したり、感染拡大するリスクを負ってでも、今本当に従業員を渡航させる必要があるのか」と、改めてお考えいただければと思います。
今回は、実際に著者が体験したAクリニックについて書きましたが、高額な料金でPCR検査・陰性証明書を発行している他の民間医療施設もAクリニックとさほど変わらない気がしてなりません。もし今回の私と同じような体験をされた方がいらっしゃいましたら、是非情報提供をお願いいたします。
【最後に】
事情があり、ここに詳しいことは書けませんが、このAクリニックが発行した陰性証明書で諸外国に問題なく入国(※)できることは確認済みです。(「陰性証明書」としての問題はまったくありませんでした)
※他施設で適切なPCR検査を受け、陰性(といっても「証明」するものではありません)であることを確認済み。