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新型コロナ禍で「オゾン殺菌」が注目される理由

新型コロナウイルス感染症については、治療薬の承認やワクチンの開発が急ピッチで進んでいますが、それらが普及して効果をあげるには、まだ時間がかかりそうです。
そこで政府は、予防に努めるよう国民に呼びかけています。

新型コロナ予防で今、「オゾン」による殺菌が注目されています。
オゾン殺菌は、新型コロナ禍の前から、一部の病院や介護施設で導入されてきましたが、一般家庭ではまだ「珍しい存在」だと思います。

オゾン(O3)は、酸素(O2)に近い気体で、強力な殺菌能力を持ちます。
さらに、新型コロナに似ているウイルスに対して、オゾンが強い殺菌効果を持つことも実証されています。
家庭や職場などでの身近な新型コロナ予防において、オゾンが注目されている理由を解説します。

なぜ「オゾンが新型コロナに効く」と証明されていないのに注目されるのか

なぜ「オゾンが新型コロナに効く」と証明されていないのに注目されるのか

この記事は、オゾンと新型コロナへの効果を解説するわけですが、2020年5月現在、オゾンが新型コロナを消滅することは証明されていません(※)。
つまり、信頼できる研究機関が、オゾンを使って新型コロナを消滅させたという公的発表は今のところまだありません。

※2020年5月現在「実際に」新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を用いて、その有効性が実験レベルで確認されているのはCDC(米国疾病予防管理センター)が行ったエタノール実験のみです。

証明できないのは新型コロナのサンプルを入手できないから

証明できないのは新型コロナのサンプルを入手できないから

【2020.05.25】
オゾンで新型コロナウイルスが不活化すると証明されました。
世界初「オゾンが新型コロナウイルを殺菌する」ことを実証

退治できると断言できなくても、「オゾンは新型コロナに効果がない」とは言えません。なぜなら今はまだ、本物の新型コロナを使ってオゾン殺菌の実験を行える状況にないからです。
例えば、オゾン発生器「オゾネオ」を製造しているマクセルホールディングス株式会社(本社・京都府大山崎町)は、次のように説明しています。

現時点では、新型コロナウイルスを入手したり、実際に効果試験を行なったりできる状況にはなく、オゾンおよび「オゾネオ」シリーズに関して新型コロナウイルスに対する効果は立証されていませんが、さまざまなウイルスを除去する効果は確認されています(*1)。

マクセルのこのコメントからは「本物の新型コロナで実験すれば、自社のオゾン除菌装置の効果を試せるのに」といった悔しさがにじみ出ています。
それと同時に、オゾン殺菌への自信もうかがえ、マクセルは次のようなことも述べています。

「オゾネオ」シリーズは、第三者機関での試験により、機種ごとにウイルス除去効果を確認しています(*1)。

マクセルは自社製品で、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、浮遊ウイルス(大腸菌ファージ)、黄色ブドウ球菌浮遊菌などを99%以上除菌できることを証明しています。

新型コロナのサンプルを心待ちにしているのはマクセルだけではありません。他のオゾン発生器メーカーも自社サイトで、「新型コロナを使った実験は行なっていないが」と断ったうえで、他のウイルスを消滅させていることをPRしています(*2)。

「オゾンが新型コロナに効く」ことはまだ証明されていませんが、オゾン発生器メーカーには、これまで培ってきた殺菌技術への「自信」があります。それで今、オゾンに注目が集まっているわけです。

*1:https://www.maxell.jp/info/assets/pdf/maxellnews_200204_2.pdf
*2:https://www.karumoa.co.jp/release/post-8920/

新型コロナは「エンベロープ」だから「オゾンが効く」と期待できる

新型コロナは「エンベロープ」だから「オゾンが効く」と期待できる

日本ウイルス学会は、新型コロナの特徴を次のように紹介しています(*3)。

  1. 新型コロナは、「エンベロープウイルス」というタイプのウイルスである
  2. 新型コロナと同じ「コロナウイルス」には、「229E」「OC43」「NL63」「HKU-1」「SARS」「MERS」の6種類が知られている(新型コロナは、7番目のコロナウイルスである)
  3. 新型コロナの遺伝子はSARSの遺伝子と80%同じである
  4. 新型コロナは「受容体ACE2」という物質を使って人の細胞に侵入するが、それはSARSと同じ

専門用語が並んでいて少し難しい内容ですが、ポイントは、「エンベロープウイルス」(1)と「SARSとの類似性」(3、4)の2点です。
この特徴があることで「オゾンは新型コロナを消滅できるのではないか」との期待が高まります。

エンベロープとは

エンベロープウイルスとは、エンベロープ(日本語で「封筒」)という性質を持ったウイルスのことです。エンベロープは細胞を囲う二重膜で、細胞の内容物を守る「鎧(よろい)」の役割があります。
あります。

エンベロープウイルスは、二重膜のお陰で防御力が強いのですが、その二重膜を破ってしまえば、内容物が漏れ出て簡単に壊れる特徴があります。

一方で、エンベロープがないノンエンベロープウイルスもあり、こちらは鎧がない分、攻撃にさらされても内容物が漏れ出にくい性質があります。

新型コロナもSARSも、エンベロープウイルスです(*4)。

東京農工大も東京医科歯科大も証明している

東京農工大も東京医科歯科大も証明している

東京農工大などは、エンベロープウイルスを使って、オゾンの殺菌効果を証明しています(*5)。

1リットルの水にわずか4mgのオゾンを溶かしたオゾン水で、エンベロープウイルスが消滅しました。
このエンベロープウイルスは、新型コロナでもSARSでもありませんが、「オゾンでエンベロープを破ることができる」ことがわかりました。

また東京医科歯科大は、特殊なオゾン水「オゾンナノバブル水」をつくり、SARSへの殺菌効果を確かめたところ、わずか60秒でほぼ0%にまで減りました(*6)。

この2つの研究から、新型コロナが持つ「エンベロープウイルス」と「SARSとの類似性」という2つの性質が、オゾンに弱い性質であることがわかりました。

オゾンはどのようにエンベロープ(鎧)を壊すのか

オゾンはどのようにエンベロープ(鎧)を壊すのか

エンベロープは、オゾンだけでなく、エタノール(アルコール)でも破壊することができます。そのため厚生労働省は、新型コロナ予防の1つとして、アルコールの利用を推奨しています(*7)。

しかし、オゾンによるエンベロープウイルスへの攻撃力は、アルコールの比ではありません。
オゾンはエンベロープ(鎧)を壊すだけでなく、ウイルスの主要成分である「ウイルスゲノム」と「タンパク質コート」も壊します。オゾンはエンベロープウイルスを構造的に破壊して、死滅させます(*8、9)。

アルコールはエンベロープを壊しますが、構造的に破壊することまではできません。そのためアルコール殺菌は、エンベロープウイルスには効果がありますが、ノンエンベロープウイルスには効果がありません。
オゾンは、エンベロープウイルスにも、ノンエンベロープウイルスにも効果があります。

*3:http://jsv.umin.jp/news/news200210.html
*4:https://www.mets-tokyo.jp/case/2019/11/18/23
*5:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/61/3/61_3_233/_pdf
*6:https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-26861807/26861807seika.pdf
*7:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00004.html#Q26
*8:https://www.besonic.co.jp/ozone/ozone02.pdf
*9:http://www.ace-kk.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%83%BB%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E3%80%8C%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E6%B0%B4%E3%81%AE%E6%9C%9F%E5%BE%85%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%80%8D.pdf

オゾンの基礎知識

イラストで簡単に理解できるオゾン消臭除菌の仕組み

ここで、オゾンの基礎知識をおさらいしておきます。
オゾンの科学式は「O3」で、酸素の「O2」と似ています。酸素に電圧をかけると、オゾンが発生します。

オゾンの殺菌力の「源」はいくつかありますが、最も強力なのは酸化作用です。
酸化とは、物質が電子を失う現象のことで、物質や生物に「錆び」「腐敗」「老化」をもたらします。ウイルスや細菌が酸化されると、弱ったり死滅したりします。
酸素も酸化作用をもたらしますが、オゾンのほうがより強力かつ短時間で酸化をもたらします。
物質のなかで最も強い酸化をもたらすのはフッ素(F)で、オゾンはその次に強いとされています。

より詳しくオゾンを知りたい人は「オゾンの特徴」をご覧下さい。

オゾン発生器の紹介

【臭気測定あり】サーキュレーター型オゾン発生器「部屋干し用オゾネオ MXAP-ARD100」の効果を検証してみた

家庭や企業などが購入できるオゾン発生器オゾン水生成器を紹介します。

<マクセルの「オゾネオ」シリーズ>
冒頭で紹介したマクセルは、「オゾネオ」シリーズを展開しています。
部屋干し用オゾネオ」は扇風機型で、気体のオゾンを洗濯物に直接吹きかけます。湿気がこもるクローゼットや押し入れの除菌、消臭にも使えます。
「オゾネオ アロマ」は、高さ20センチの小型装置で、テーブルに置いてスイッチを入れると、オゾンが噴き出て部屋中を除菌します。
(*10、11)

<メッツの「室内殺菌システムAirdecon200」>
株式会社メッツ(本社・東京都足立区)の「室内殺菌システムAirdecon200」は、300立方メートルの空間(高さ2.5メートル、幅11メートル、奥行き11メートルの部屋)に対応し、病院の手術室や感染隔離室でも使える本格派です。
Airdecon200は、オゾンと過酸化水素の2種類の殺菌剤を噴出します。
(*12)

<ワイズカンパニーの「オゾン水製造装置」>
株式会社ワイズカンパニー(本社・神奈川県横浜市)は、オゾン水製造装置のメーカーです。
同社の「オゾン水 除菌スプレー YSくりんYS8ZWSP」は、ハンディタイプのオゾン水製造機器です。大きさは高さ28センチ、重量410グラムで、見た目はファブリーズなどのスプレーと同じです。
RO水など、高純度の水を本体に入れて電源をONにするだけでオゾン水ができ、そのままレバーを引くだけで殺菌したい部分に吹きつけることができます。
(*13)

オゾン水除菌スプレー「YSくりん-YS8ZWSP」

画像:「YSくりんYS8ZWSP」の外観

*10:https://www.maxell.jp/consumer/mxap-ard100.html
*11:https://www.maxell.jp/consumer/mxap-fa100.html
*12:https://www.mets-tokyo.jp/products/airdecon/airdecon200.html
*13:https://www.ozon-uv.com/ys8zwsp-ozone-water-spray.htm

「部屋には気体」「部分的にはオゾン水」と使い分ける

「部屋には気体」「部分的にはオゾン水」と使い分ける

オゾンで殺菌する場合、気体のまま使う方法と、水に溶かして使う方法があります。
部屋全体を殺菌するには、隅々まで行き届く気体オゾンが適しているでしょう。ドアノブだけ、テーブルだけ、食材だけ、器具だけといったように、部分的、局所的に消毒するのであれば、オゾン水がよいでしょう。

ダイヤモンド・プリンセス号が「教えてくれた」こと

ダイヤモンド・プリンセス号が「教えてくれた」こと

出典:msn.com

もし「オゾンが新型コロナ予防に有効である」という仮定が正しければ、気体のオゾンとオゾン水の両方を使いわけて、殺菌したほうがよいでしょう。
なぜなら新型コロナは、どこにでも侵入するからです。

2020年2月、3,711人の乗員乗客を乗せた豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内で、新型コロナの集団感染が発生しました。同船は横浜港に係留され、最終的に712人が感染しました。

国立感染症研究所が、船内の「共用部分97カ所」と「乗員乗客の49部屋490カ所」と「7部屋14カ所の空気」を調べたところ、新型コロナが次の場所で見つかりました(*14)。

  • 廊下の排気口
  • 浴室内のトイレの床
  • 電話機
  • テレビのリモコン

(空気からは見つからなかった)

感染者が接触するトイレの床や枕などから新型コロナが見つかったことは、想定の範囲内といえるでしょう。
しかし、廊下の排気口から見つかったことは、国立感染症研究所は想定していなかったようで、次のような見解を述べています。

空気伝播を示唆する証拠は得られなかったが、特殊な環境でウイルスが遠方まで浮遊する可能性について更なる検討が必要である(*14)

新型コロナ対策では、政府は、密接、密集、密閉の「3密」を避けるように呼び掛けていますが、これは「空気感染は起きていない」ことが前提になっています(*15)。新型コロナが空気感染するのであれば、3密を避けるだけでは逃げ切れません。

しかし、国立感染症研究所が、特殊な環境下で新型コロナが遠方まで浮遊する可能性について危惧するのであれば、国民は自衛策として、空気感染についても備えておいたほうがよいでしょう。

こうしたことを考慮すると、オゾン水でトイレの床や枕や電話機などを殺菌し、気体のオゾンで空気や空間を殺菌したほうが、より確実です。

*14:https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov.html
*15:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00006.html

安全をどう確保するのか

安全をどう確保するのか

高濃度のオゾンはアルコールや次亜塩素同様、毒性があり、人が吸い込み続けると時に命に関わります。
そのため、気体のオゾンやオゾン水で新型コロナ予防をする場合、安全を確保しなければなりません。
最も簡単かつ確実な安全策は、オゾン発生器メーカーが指示する使用方法とおりに使うことです。

高濃度オゾン(気体)を発生させる業務用オゾン発生器を使うときは、部屋を無人にしてドアや窓を閉めてから稼働し、一定時間が過ぎるまで入室させない、といった措置が必要になります。
一方、低濃度のオゾンしか出さない家庭用オゾン発生器であれば、子供がいる部屋でも安全に動かせるものがあります(*16)。

オゾン水も同じで、オゾン濃度が高いもの(10ppm以上など)はそれなりに注意して取り扱う必要がありますが、濃度が高くなければ、そこまで神経質になる必要はありません。
例えば、パナソニックのトイレ「アラウーノL150」は、オゾン水製造装置が内蔵されていて、排泄後に便器を洗浄します(*17)。アラウーノL150にはセンサーがついていて、利用者がトイレを出てから3分後にオゾン水を散布するようにしています。

オゾンは、放置しておくと自然に酸素に戻るので、毒性(殺菌作用)が残留することはありません。
また、オゾンは森などの自然界にも存在するので、低濃度であれば健康を害することはありません。
オゾンは高濃度のときだけ注意すればよく、その他の殺菌剤より安全を確保しやすい物質です。

*16:http://www.ohnit.co.jp/faq_category/%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%AF/
*17:https://sumai.panasonic.jp/toilet/alauno/feature/detail.php?id=ozon-water

オゾン以外の殺菌方法「アルコールと次亜塩素酸」について

オゾン以外の殺菌方法「アルコールと次亜塩素酸」について

厚生労働省は医療機関や検査機関に対し、新型コロナ対策をアドバイスしています(*18)。
そのなかで、感染の疑いのある患者を診察するときの準備として、次の方法を勧めています。

  • 手などの皮膚の消毒をするときは、消毒用アルコール(濃度70%)を使う
  • 物の表面の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(濃度0.1%)を使う
  • 医療器具の消毒には、グルタラール、フタラール、過酢酸も有効

アルコールや次亜塩素酸ナトリウムといった、伝統的な殺菌剤が新型コロナに有効であることは、安心できます。これらの殺菌剤は入手が簡単だからです。
さらに気体オゾンやオゾン水を加えることで、より確実な防御策を講じることができるでしょう。

*18:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00004.html#Q26

まとめ~オゾンが身近になっていてよかった

新型コロナ禍の前から、大学の研究者やメーカーなどは、オゾンを使ったウイルス・細菌対策を研究・開発していました。その結果、オゾンでさまざまなウイルスや細菌を消滅できることがわかり、さまざまな用途に応じた殺菌機器が生まれました。

オゾン発生器は、一大ブームになるほど普及しているわけではありませんが、殺菌や消毒について真剣に考えている人たちには、すでに身近な存在になっています。
そこに、新型コロナ禍がやってきました。
残念ながら、本物の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を使ったオゾン殺菌の実験は、まだ行うことができていませんが、これまで培ってきた膨大な実験結果から「オゾンなら新型コロナを退治してくれるだろう」と考えられています。
オゾンが身近な存在になっていてよかった、といえるでしょう。

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