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ダイオキシン処理にオゾンはどう役立つか?

適切なゴミ処理は、環境問題対策と大きく関連があります。ゴミを焼却すれば二酸化炭素が排出され地球温暖化へとつながります(※1)。また日本など先進国で不要となったペットボトルは中国や東南アジア諸国などに輸出されていましたが、処理できない等の理由から受け入れ先だった国はペットボトルの輸入ストップを実施あるいは検討する(※2)など、適切なゴミ処理が求められます。

ゴミ処分問題で約20年前に顕在化したのが、ダイオキシンの発生です。ゴミ焼却により排出されるダイオキシンは人体にも悪影響を及ぼすため、その削減対策が課題になりました。

ダイオキシン対策が進んだことから最近ではあまり話題になりませんが、実はオゾンがダイオキシンによる環境汚染防止に大いに役立っているのです。

環境に悪影響を及ぼすダイオキシン問題

環境に悪影響を及ぼすダイオキシン問題

1990年代後半から、ごみ処理に伴うダイオキシンの発生が社会問題になりました。都市ゴミ焼却施設から排出された飛灰のなかから、ダイオキシンが大量に検出されたためです。

ダイオキシンが人体に悪影響を及ぼすことは、以前から知られていました。ベトナム戦争で米軍が実施した除草剤による枯葉作戦で、不純物に含まれていたダイオキシンが原因とみられる奇形が多発しました(※3)。

米軍による枯葉作戦のようなケースでは、戦争の終結や除草剤の使用をストップすれば、ダイオキシンの発生は食い止められます。しかしダイオキシンの多くは別のルートから発生しています。環境省の資料によると、ゴミの焼却施設や金属精錬施設、森林火災等がダイオキシンの発生源です。そのうち、ダイオキシン発生源の大半を占めるのが、ゴミ焼却によるものです(※4)。

ダイオキシンとはどんな化学物質?

ダイオキシンとはどんな化学物質?

そもそも、ダイオキシンとはどのような化学物質なのでしょうか。実は、ダイオキシンという単一の化学物質が存在するのではなく、ゴミを焼却したときに排出される一連の毒性物質に対して使用される用語です。そのため、通常はダイオキシン類と呼ばれています(※5)。

ダイオキシン類は、塩素を含む物質の燃焼や、薬品類の合成の際に、意図しない副生成物として発生します。ダイオキシン類対策特別措置法にも、ダイオキシン類が定義されています。

  1. ポロ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
  2. ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)
  3. コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)

この3つの化合物は、塩素の数やその配置によってさらに分類されます。環境省の資料によると、PCDFは135種類、PCDDは75種類、Co-PCBは十数種類存在します。

ダイオキシンの毒性は、塩素の個数と配置に依存しています。上に挙げた化合物のうち、29種類に毒性があると認められています。

ダイオキシンの動物や人体への影響

ダイオキシンの動物や人体への影響

ダイオキシン類の人体に及ぼす影響は、動物実験等の多くのデータにより明らかになっています(※6)。2週間以内に症状が現れる急性毒性と、6カ月以上経って症状が出る慢性毒性の両方で、ダイオキシン類への人体への影響が報告されています。

遅延性致死毒性

まずは急性毒性に関してです。動物実験によると、1.2日では死なずに、2週間から6週間にかけて死ぬことが明らかになっています。ダイオキシン類は甲状腺の細胞を壊死させ、その機能が小さくなります。そのため栄養素が体内に取り込まれず、体重が減少し死に至ります。これが遅延性致死毒性と呼ばれるものです。

遅延性致死毒性のほかにも、胸腺の萎縮、脾臓の萎縮、肝臓障害、生殖障害などが認められています。

胸腺の萎縮

胸腺の萎縮

アポトーシス(調整のために引き起こされる細胞死)により胸腺の細胞が壊死し、免疫機能が低下します。

脾臓の萎縮

脾臓の萎縮

脾臓には造血機能と免疫機能の両方が備わっており、障害が起きると両機能が低下します。

肝臓障害

肝臓障害

タンパク質の合成や脂質代謝、解毒、それにビタミンAを貯蔵する肝臓に障害が起きると、肥大し脂肪肝の症状が出てきます。さらに進むと、細胞が壊死します。肝臓障害がヒトに起きると、タンパク質の合成の不足による顔の浮腫、手足の浮腫などが症状として現れます。また脂質代謝が起こりにくくなり、血液中の中性脂肪やコレステロールが増加し、顔が脂ぎる傾向にあります。

生殖障害

生殖障害は男女関係なく起こります。男性では精巣の萎縮、精子の減少、男性ホルモンの低下が引き起こされます。女性の場合、子宮内膜症や妊娠率の低下、流産のような生殖障害が現れます。

発がん性

発がん性

慢性的な毒性による症状として、発がん性が主に挙げられます。急性毒性と異なり、微量な汚染での発がん性が動物で確認されています。主な症状として、組織肉腫、リンパ腫、肺がんが挙げられます。

ダイオキシンへの対処法

ダイオキシンは動物や人に悪影響を及ぼすことから、さまざまな対処がされています。

法律による規制

法律による規制

ダイオキシン類は人体や動物に対して健康被害を及ぼします。ダイオキシン類による環境汚染を防止するため、ダイオキシン類対策特別措置法という法律が2000年1月に施行されました。排出ガスや排出水の規制や、ゴミ焼却施設で発生した灰の処理、ダイオキシン類に土壌が汚染された場合の措置や、ダイオキシン類の排出量削減に関する数値目標などが法律に細かく記載されています。ちなみに、排ガス基準値は0.1ng-TEQ/m3N(※7)以下に設定されています。

ダイオキシン類の排出量を排ガス基準値以下にするため、技術開発が行われ、都市ごみ焼却施設に導入されました。環境省の調査によると、2014年にはダイオキシン類の排出量は99パーセント以上削減され、削減目標値を下回るようになりました。

ゴミ焼却施設におけるダイオキシン類の削減

ゴミ焼却施設におけるダイオキシン類の削減

先述のように、ゴミ焼却施設がダイオキシン類が主な発生源です。そのため、ゴミ焼却施設でダイオキシン類の処理が重要になってきます。

ゴミが処分されるには、いくつかのプロセスを経る必要があります(※8)。家庭でも分別が行われるゴミですが、焼却施設でも前処理としてさらに選別が行なわれます。焼却したのち、発生する塵や有毒ガス、排水は適切に処理され、焼却処理で出てきた灰は埋立処分されます。

ダイオキシン類排出を削減するためには、燃焼過程、排ガス処理過程、灰処理過程のそれぞれで対処が必要になります(※9)。燃焼過程では温度や時間、攪拌を調節することでダイオキシン類発生を抑え、排ガス処理にはバグフィルタや触媒、活性炭等を用い吸着・除去するのが主な方法です。最終的に出た灰はダイオキシン類分解装置等により分解され、埋め立て処理場へと搬入されます。

ダイオキシンの排水への影響

ダイオキシンの排水への影響

以上のような処理により、飛灰中のダイオキシン類濃度は3ng-TEQ/gから0.1ng-TEQ/gに抑えることが可能になります。一見問題ないダイオキシン類の処理ですが、見逃せないのが排水への影響です。

ダイオキシン類は水に溶解しにくいため、排水からダイオキシン類が伝わる割合は非常に少ないと考えられてきました。ところが、水中に含まれる共存物質の存在により、高濃度のダイオキシン類が水中に溶け込んで、環境中に放出されるケースがあることが調査により分かってきました。そのため、排水におけるダイオキシン類を分解する処理も重要になってきます。

オゾン処理はどうダイオキシン処理に役立つか?

オゾン処理はどうダイオキシン処理に役立つか?

オゾン処理はダイオキシンへの対処法として利用されていますが、具体的にオゾンがどのように役立つのかみていきましょう。

ダイオキシン類分解に利用されるオゾン

ダイオキシン類分解に利用されるオゾン

浸出水中のダイオキシン類を分解する際に用いられるのが、酸です。排水を浄化するために用いられる酸として塩素も有力な手段ですが、過剰な添加には発がん性物質であるトリハロメタンが生成されるなど、水源が汚染することがあります(※10)。

一方、塩素よりも安全性の高い物質として、オゾン(O3)が挙げられます。酸素原子3個からなるオゾンは、殺菌や漂白だけでなく、排水処理にも用いられています。高濃度だと人体への影響のあるオゾンですが、低濃度にコントロールすることで、私たちにとって有益な物質へと変わります。

ダイオキシン類を分解するためにも、オゾンが用いられています。「促進酸化法」と呼ばれる、酸化力の高いヒドロキシルラジカル(OH-)によりダイオキシンに含まれる炭素原子同士の結合を分解する方法が排水処理に活用されています。ヒドロキシルラジカルはほとんどの有機物や還元性物質と反応し、最終的には二酸化炭素と水とに分解されます。このヒドロキシルラジカルが、オゾンや過酸化水素、紫外線、酸化チタン、重金属触媒、高pH、放射線照射等を複合的に組み合わせることで生成されているのです(※11)。

また、オゾンを注入しながら紫外線を照射する「化学的分解法」もダイオキシン類分解に有効です(※12)。オゾンと紫外線により生成されたヒドロキシルラジカルでダイオキシンを分解し、さらに紫外線照射による脱塩素化で、無害化することが可能です。化学的分解法を用いた実験によると、9.0pg-TEQ/lのダイオキシン類を含む埋立浸出水の原水が、平均で0.002pg-TEQ/lにまで抑えられ、除去率は99.97パーセントであることが明らかになっています。

最終処分場で発生した浸出水は、浸出水処理施設を経て、河川・湖・沼・海域などに放流されます。浸出水処理施設はダイオキシン類から水を守るために重要な役割を果たしているのです。

まとめ〜ますます期待が活躍されるオゾン

まとめ〜ますます期待が活躍されるオゾン

ダイオキシン類の人体への悪影響は多大です。すぐれた分解技術により、ダイオキシン類の危険性は以前ほど騒がれなくなりました。その一方で分解技術にも安全性が求められます。

排水処理は、人間の健康保護の側面以外にも、自然生態系の保全にも重要です。化学物質の管理も重要で、未規制だった化学物質の処理の需要も出てくるでしょう。安全性の高いオゾンがますます役立つことが期待されます。

<脚注>
※1 地球温暖化の原因と予測(全国地球温暖化防止活動推進センター)
https://www.jccca.org/global_warming/knowledge/kno02.html
※2 東南アジア諸国が廃プラスチック輸入規制を強化、日本の輸出量は減少(日本貿易振興機構)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/32168afb4b8f0bfe.html
※3 『気になる化学の基礎知識』
※4 ゴミ焼却施設でのダイオキシン大量発生が問題視された2000年前後の排出量に関しては、国立環境研究所が統計を公表している。
http://www.nies.go.jp/archiv-edc/hrisk/daioxin2.htm
※5 以下では、ダイオキシン類に統一。
※6 本章は『ダイオキシン』(宮田秀明 著、岩波新書)をもとに作成。
※7 単位量当たりの毒性(等量)を表す。排ガス等に用いられる。
※8 『基礎からわかるごみ焼却技術』(タクマ環境技術研究会 編著)
※9 『オゾンハンドブック 改訂版』(日本オゾン協会 編著)
※10 『よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み』(和田洋六 著)
※11 促進酸化法については、『オゾンハンドブック 改訂版』のほかに、「促進酸化法」(『化学工学』2002年6月号)を参照。
※12 化学的分解法については、『オゾンハンドブック 改訂版』のほかに、「クボタのダイオキシン分解装置/脱塩処理装置」(『環境施設』No.89)を参照。

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