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オゾンが可能にする安全で効率的な養殖

養殖魚介類に対する消費者の意識は一昔前と比べて向上していると言えますが、安全性などへの懸念が依然として根強いことが調査からうかがわれます(※1)。農林水産省が平成26年に全国の消費者モニターを対象として実施した意識調査によると、安全性について不安を感じる人の割合は22.5%で、安心と答えた人よりも多く、購入時に天然か養殖かを気にする人の割合は7割を超えます。

飼育環境や餌の改良、ワクチンの活用など、養殖生産物の質と安全性を高める生産者の試みが消費者にうまく伝わっていないことも要因ですが、豊富な魚とともに暮らしてきた日本では天然物に対する信仰が厚く、もともとのハードルが高いのも事実です。さらなるイメージ向上のためには消費者に向けた明白なアピールポイントが求められます。

オゾンの活用はそうしたアピール力を秘めた手段の一つです。オゾンは殺菌・脱臭・水質改善に高い効果を発揮する上に、短時間で酸素に分解するため生産物や環境への残留性がないという特質を有しています。したがって、国連食糧農業機関(FAO)が提唱する「責任ある漁業」を実現し安全性を消費者にアピールするための格好の手段と言えるのです。加えて、技術の進展によりコストパフォーマンスも非常に高くなってきています。

この記事ではオゾンの特性と魅力をわかりやすく解説し、養殖業への導入事例と研究動向について紹介していきます。

養殖に役立つオゾンの特性

養殖に役立つオゾンの特性

水に溶解した状態のオゾンはガス状のオゾンよりも反応性が高く取り扱いも容易であるという性質があり(※2)、オゾンは養殖業ととくに相性のよい物質です。ここでは養殖業にとって魅力的なオゾンの特性を簡潔に解説します。

酸化力が強い

オゾンの酸化力はフッ素に次いで高く、消毒剤の代表的な成分である塩素の6倍とも言われています(※3)。したがって高濃度では人や魚介にも有害ですが、低濃度で用いることで病原体だけを排除することができます。

オゾンは病原体の脂質・タンパク質・細胞質・核酸などを多方面から次々と攻撃し、死滅ないし不活化の状態に至らせます(※4)。また、オゾンと水中溶存物の反応で生じるオキシダントも殺菌作用を持ちます。後で述べる通り、消毒後のオキシダント除去がオゾン活用の際の課題となります。

オゾンはほとんどすべての細菌・ウイルスに効くため、薬剤を選ぶ必要がなく、病害発生直後で病原体が不明の段階でも使用することができます。比較的高濃度のオゾンにより赤潮の原因となる微生物を死滅させることも可能です(※5)。

オゾンは有機物を酸化・分解する作用も持つため、飼育水の浄化のために古くから内外の水族館で使われてきました(※6)。また、魚毒性を持つ亜硝酸やアンモニアなどの無機化合物を直接または間接的に分解する作用も知られています。これらの作用により脱臭効果も発揮します。

薬剤耐性菌を生まない

薬剤耐性菌を生まない

オゾンは抗生物質・抗ウイルス剤と違って薬剤耐性を生じさせにくいのもポイントです。

抗生物質・抗ウイルス剤は細菌・ウイルスの特定の部位にピンポイントで作用して機能を撹乱し死滅・活動停止に追い込みます。そのため、ただ一箇所の突然変異によって薬剤耐性が生じてしまう可能性が高いのです。一方、オゾンはマルチポイント攻撃が特徴ですので薬剤耐性菌を生む心配はほとんどありません。

薬剤耐性菌が発生すると有効な対策がないまま病害が蔓延し、その影響は周辺漁場にもおよびます。医療、農業、漁業の各分野で世界的に抗生物質の削減が目指されており、養殖現場ではワクチンの利用が推奨されています。オゾンはワクチンと並んで安全な感染対策としてか活用できます。

残留性がない

菌やウイルスに酸素原子がアタック

オゾンは強力な殺菌作用をもちながら残留性がないのが最大の特徴と言えます。オゾンは化学的に不安定で、通常の環境では放っておいても自然に短時間で酸素に分解してしまうのです。飼育水をオゾンで殺菌した後は曝気するだけでオゾンを除くことができます。

ただしオゾンと水中溶存物の反応で生じるオキシダントには残留性があり、とくに海水は溶存物が豊富であるためオキシダント発生量も多く、消毒した用水を飼育槽に戻す前に活性炭フィルターなどを通してオキシダントを除去する必要があります(※7)。近年ではこの方面の技術も進み、安全なオゾン水を循環させる装置が開発されています。

残留性がないということは裏を返せばオゾン発生から短時間で消毒を完了しなければならないことを意味し、この点はオゾンのデメリットと言えますが、オゾンをできるだけ微少な泡にして殺菌効率を高める方法(※8)など、それを補う技術が色々と開発されてきています。

ランニングコストが低い

オゾンは発生機と水と電源さえあれば利用できるためランニングコストが低いのも特徴です。病害予防のための飼育用水・器具の殺菌、伝染病発生時の消毒、水質改善、脱臭など、現場で幅広い用途に振り分けることにより機器導入の費用対効果を格段に高めることも可能です。水産用医薬品をいろいろと使い分ける必要がない分、薬品購入・管理のコストも削減できます。

養殖でのオゾン活用例

養殖でのオゾン活用例

以上のようなオゾンの特性を活用して実際に養殖を営んでいる事例と飼育実験の事例を紹介します。

淡水魚養殖場の例

淡水魚養殖場の例

山梨県の南アルプスの麓にある有限会社忍沢養殖場では豊かな水源を利用してマス・ヤマメ・イワナなどの養殖を行っています。家族経営の少人数体制で、こだわり抜いた養殖法を用いて高品質な淡水魚の少数生産を貫いています。そのこだわりの一つがオゾン殺菌システムを用いた飼育水の管理です。オゾンシステムはこうした小規模経営の養殖場から大規模な養殖施設まで幅広く対応することが可能です。

海水魚養殖の飼育試験

海水魚養殖の飼育試験

上述の通り、海水にオゾンを加えるとさまざまなオキシダントが発生し、オゾンとオキシダントの両者が殺菌効果を発揮する一方、オキシダントは残留して魚毒性を示します。そのためオキシダントを除去する装置を組み込んだオゾン殺菌システムが開発され利用されています。

一般社団法人マリノフォーラム21は、オゾン処理装置と活性炭フィルターを用いて作られた飼育海水でヒラメを飼育する試験を行い、オゾン殺菌の有効性を確認しています(※7)。日本栽培漁業協会も数カ所の事業所でオゾン殺菌した飼育用水を用いた種苗生産を行っており、オゾンが病害予防に有効であるとともに稚仔魚の発育・生存率には悪影響を与えないことを確かめています。

オゾン処理した海水を飼育器具類の消毒に用いることも可能です。マツカワの受精卵に対する試験では、オゾン水はヨード剤よりも優れた消毒効果を示し、孵化率にも影響がないという結果が出ています。

まとめ〜目下の経営課題に応えるオゾン

まとめ〜目下の経営課題に応えるオゾン

オゾンは強い酸化力と環境への安全性を合わせ持つ優れた物質で、養殖のさまざまな現場への導入が進んでいます。技術開発も加速しており、将来的な可能性は非常に大きいと言えます。オゾン発生システムはさまざまなタイプ・規模のものが開発されており、養殖経営の規模や方向性、具体的な経営課題などに応じて導入することが可能です。

養殖生産物の安全性への懸念や、周辺環境への影響などについての批判は根強く、昨今では養殖に対するイメージの向上が見られるとは言え、さらにもう一歩のアピールが求められています。

「責任ある漁業」の実現のためには個々の養殖経営者が将来を見据えた経営を行っていくことが重要です。オゾンは目下の経営課題に応えつつ、社会的責任を果たすための助けにもなる物質です。オゾン技術を率先して導入することで、「責任ある企業」として有意義な差別化を図っていただきたいと思います。

<参考文献>
※1)平成25年度水産白書 「第1章 特集:養殖業の持続的発展 第3節養殖水産物と食卓」
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h25/attach/pdf/25suisan1-1-3.pdf
※2)日集中医誌2000 年 7 巻 1 号「オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf
※3)電氣學會雜誌「新しいオゾン技術とバイオテクノロジー」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/108/12/108_12_1173/_pdf
※4)筑波物質情報研究所「オゾンによる殺菌機構」
http://www.jcam-net.jp/data/pdf/06016.pdf
※5)熊本県水産研究センター「物理的・化学的防除技術の開発」
http://www.maff.go.jp/j/budget/yosan_kansi/sikkou/tokutei_keihi/seika_h22/suisan_ippan/pdf/60100194_04.pdf
※6)電気学会誌「オゾンで魚を育てる」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1994/114/10/114_10_649/_pdf
※7)日本医療・環境オゾン研究会会報「オゾンによる魚類飼育用水の殺菌法 : 特に海水への応用」
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/39508/1/yoshimizu-143.pdf
※8)浦上財団研究報告書「オゾンマイクロナノバブルを用いた青果物の残留農薬除去技術の開発」
http://urakamizaidan.or.jp/hp/jisseki/2007/vol16urakamif-18nakamura.pdf
※9)有限会社忍沢養殖場「大切にしていること」
http://www.ninzawa.jp/important

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