現代の介護現場は様々な課題を抱えています。中でも、スタッフ不足が深刻化する中で、入居者一人一人にスタッフが就くことが難しく、細かな作業まで手が回らない状況に陥っています。
そのため、排泄処理や身体の拭き取りが不十分となり、結果として部屋中ないしは施設全体に悪臭が染み付いてしまいます。
悪臭は施設内の当事者や他の入居者だけでなく、施設の見学者や施設周囲に居住している方にまで悪印象を与えてしまいます。
そうならないためにも、人手が回らない中で、いかに効率的に消臭できるかが求められています。
今回は、悪臭問題を解決したいスタッフの方や、相次ぐ苦情を解決したい方向けに、消臭効果の高いアイテムや手軽で便利なアイテムのメリットとデメリット、排泄臭への対策をお伝えします。
介護施設に悪臭が染み付く原因とは
介護施設に悪臭が染み付く原因は、主に複合臭によるものです。複合臭とは簡単にいうと、Aという臭気とBという臭気が混ざり合うことによってさらに強烈なCという臭気を作り出してしまうことを指します。
特に介護関係の現場における複合臭は他の業種・現場の複合臭とはレベルが違います。その理由は、食べ物や(一般的な)体臭の他に尿臭や便臭、湿布薬のような薬品臭が大きく関係してくるからです。
介護関係の現場における5大複合臭は「尿臭」「便臭」「汗臭」「加齢臭」「湿布臭」だといわれています。
それぞれのニオイの根本を解決しないことにより、部屋中または施設中においてこれらを材料とする強烈な複合臭が常に生成されてしまい、中にはその強烈な複合臭が施設内ほぼすべてに充満しているケースもあります。
今回はそんな介護施設関係者向けにその解決策をご提案したいと思います。
介護における最強のアイテムはオゾン発生器
画像:実際に介護施設に導入・利用されているオゾンクラスター1400
この記事は少々長くなってしまいそうなので、先に結論からお伝えすることにします。
もっとも手っ取り早く、確実に根本から消臭除菌したいのであれば、業務用のオゾン発生器を導入して下さい。これが確実です。
介護施設の悪臭を根本的に解決してくれる最強のアイテムとして、業務用あるいは家庭用のオゾン発生器が施設関係者にはよく知られています。
しかし、中には、「オゾン発生器がいいらしいけど、空気清浄機と何が違うの?」「結局、メリットとデメリットは何?」と、オゾン発生器という機器をあまりよく知らない方もいると思いますので、ここではオゾン発生器の概要とメリットデメリットを分かりやすくお伝えします。
オゾン発生器とは
画像:自宅介護で利用されている家庭用オゾン発生器「オゾンクルーラー」
オゾン発生器とは、その名の通り消臭効果の高いオゾンを発生させる機器です。オゾンが消臭に優れている理由は後ほど解説しますが、オゾン発生器は悪臭の温床地帯に設置し使用するだけで消臭効果が期待できる機器です。
オゾン発生器のメリットとは
続いてはオゾン発生器のメリットについて紹介します。
オゾン発生器は悪臭を根本から消臭除菌
オゾン発生器のメリットの一つとして、ニオイの原因を根本から消臭除菌してそのニオイ問題を解決できることが挙げられます。
では、そのオゾンがなぜ消臭に優れているのか、詳しく解説していきます。
そもそもオゾンとは何かご存知でしょうか?
オゾンは酸素原子が3つ結合した酸素の同素体で、特有のニオイと有毒性を持ち合わせている気体です。
(詳しくは「オゾンの特徴」をご覧下さい)
オゾン自体は空気中に一定数存在していますが、オゾンの分子は非常に不安定なため、空気中で他の分子と触れることで「酸化」という現象をもたらします。この酸化のメカニズムの正体が「消臭」や「除菌」なのです。そのため、オゾンは悪臭の除去にうってつけなのです。
というのも、オゾンの酸化力は塩素の約6倍の効果があり、結びついた一方の分子を強力な酸化力をもって分解するためです。
空気中の悪臭も布団やカーペットに染み付いた悪臭もオゾン発生器で解決することができます。
オゾン発生器は消臭性能だけでなく除菌性能も高い
前述で、オゾンは強力な消臭効果を持つとお伝えしましたが、実は除菌効果も高いのです。(厳密にいうと、除菌するから消臭されます)
オゾンは細菌の細胞膜が持つ水分と化学反応することで、細胞膜の水分量を減少させ、オゾンが細胞に浸透することにより、細菌の細胞膜を分解します。
細胞膜が不安定になることで、細胞核が死滅、このメカニズムにより除菌されます。加えて、細胞膜の分解は化学反応によるものなので、薬剤などと異なり耐性菌を作りません。(さらにオゾンは残留性がないので安全性も高いです)
多種多様な機能を持つオゾン発生器
オゾン発生器は、製品ごとに様々な機能がついています。例えば、モード機能が搭載され、オゾン放出だけではなく、マイナスイオン放出も可能な「オゾンクルーラー」という製品があります。この製品は、一般家庭だけではなく、介護施設などでも幅広く利用されている製品で、通常時はマイナスイオン発生器として常時稼動。本格的に消臭・除菌するときはオゾン発生器として利用するなど、臭気レベルによって使い分けることが可能です。
また、高額ですが、何かしら問題が発生したときのために遠隔操作機能を備えたものもあります。
オゾン発生器のデメリットとは
オゾン発生器はメリットばかりではありません。
ここではオゾン発生器の目立つデメリットを挙げてみます。
・高価
機能やサイズ、メーカーにより異なりますが、業務用のオゾン発生器は、標準サイズで20〜30万円程度かかります。
家庭用のオゾン発生器は、1〜5万円程度が主流です。最近はコンパクトサイズのオゾン発生器もあり、こちらは比較的リーズナブルなものが多いですが、その分、効果は高くありません。選び方を間違わなければ、販売価格は効果に比例すると考えていいでしょう。
参考:オゾン発生器の正しい選び方
・人体に有害
たしかに、オゾン自体は物質としての有害性がありますが、業務用オゾン発生器を家庭用のように有人環境で使用したりしなければまず問題はありません。
業務用・家庭用にかかわらず、オゾン発生器を利用する際は、オゾンの特性を知り、正しい使い方をして下さい。
参考:適正なオゾン濃度
介護現場で支持されているオゾン発生器の特徴
続いて、介護現場で高い支持を得ている人気が高いオゾン発生器の特徴について解説します。介護施設等で必要とされているオゾン発生器には2つの特徴があります。
まず1点目。それは、家庭用と業務用のオゾン発生器が入り混じっていることです。
そして2点目は、この業種においてオゾン発生器を探している方は「比較的パワフルなスペックを求めている」という点です。
それもそのはず。介護現場での臭気を知る人であれば、この業種における現場のニオイがどれだけキツいものかお分かりだと思います。「有人環境」で使用するにしても、「無人環境」で使用するにしても、パワフルなオゾン発生器をお選びいただければと思います。介護現場で人気が高いパワフルなオゾン発生器は「医療福祉関連業におすすめのオゾン発生器」からご覧下さい。
手軽にできるおすすめ消臭アイテムのメリットとデメリット
「オゾン発生器が便利なのは分かったけど…今すぐ導入するのは難しいな…」という方もいると思います。当記事は、オゾン発生器をおすすめするだけが目的ではありません。「介護現場のニオイ問題を抱える担当者様のお役に立つ」ことが目的です。続いては、手軽にできるおすすめの消臭アイテムをメリット・デメリット付きで紹介します。
クエン酸入り消臭スプレー
実はクエン酸にはアルカリ性を中和する力を持っています。独特なニオイのあるアンモニアは、まさにアルカリ性です。排泄臭などはクエン酸を含むスプレーさえあれば、手軽に消臭することができます。
メリットは上記で述べた通り、手軽に消臭できる点ですが、デメリットとして複数の複合臭には効果が薄いことです。
アロマ入りスプレー
アロマを含むスプレーを吹きかけることによってニオイを中和します。
香りの強弱に関係なく空間のニオイを上書くことができます。
メリットとして、複合臭にも効果があるので、幅広く利用できることです。
デメリットは、香りの強弱によっては人が不快を感じたり、アロマによっては悪臭と混ざることでより不快なニオイの原因にもなりえることと、一時的なマスキング(包み隠す)手法によるものなので、根本解決にはならない点です。
消臭剤
消臭剤と言えば、よくトイレに置いてある置き型の物が身近ですね。今では様々な香りの消臭剤が出ていますので、自分の好きな匂いが手に入りやすくなりました。
その他にも、安価で購入できる、置くだけで消臭効果が期待できます。しかし、広い空間ほど消臭効果が薄いと使い所が限定的なのが難点です。
オゾン発生器以外の急速脱臭機
オゾン発生器も脱臭機の一つですが、急速脱臭機は短時間での消臭効果が高いです。フィルターにニオイを吸着させるタイプから直接ニオイを吸い込むタイプのものが存在します。
用途に応じて使い分けできるのが特徴的ですが、効果もコスパもオゾン発生器の方が高いため、すでにオゾン発生器を所有している、購入できる方であれば、急速脱臭機は不要になりがちです。
サーキュレーター
換気のお供と言えばサーキュレーターを忘れてはいけません。
よく扇風機と混同されますが、扇風機は短距離で横に広く、サーキュレーターは長距離で狭い範囲に風を送ることができるといった違いがあります。
介護では長距離に風が届くサーキュレーターが重宝されます。
サイズも多様化しており、様々な場面に合わせた運用ができます。
デメリットとして、窓を開けての換気が難しい場合は使用する機会がさほどありません。
重曹
介護の現場では入居者の排泄物が服や布団に染み付くことが多々あります。
そういった場合に、重曹による洗濯が効果的です。
重曹を使用することで、服に染み付いたシミが抜けたり、強い消臭効果に期待できます。
手洗いなどで長時間に渡り、直接重曹に触れていると手荒れなどを引き起すため、直接触れるときは必ずゴム手袋を着用するなどの対策をしましょう。
排泄臭対策は日常の習慣から対策を
そもそも悪臭は、起きてから対処するのではなく、事前に対策を立てて置くことが重要です。ここでは対策可能な排泄臭についての対策をお伝えします。
尿のニオイは水分量により変化
ご存知でしたか?
尿のニオイは水分量によって変化します。
当然水分量が少なければ少ないほど、ニオイは強くなります。適度な水分補給はニオイ対策だけではなく、脱水症状や熱中症予防にも繋がります。
うんちのニオイは生活習慣が大きく影響
うんちのニオイは腸内の善玉菌と悪玉菌により作用します。善玉菌が多いほどニオイは弱く、逆に悪玉菌が多ければニオイは強くなります。
善玉菌も悪玉菌も、食事や体調、適度な運動などの生活習慣により増減します。高脂質な食事は控え、発酵食品やビフィズス菌を摂りる、毎日30分はラジオ体操をするなど、できるところが見直すことが大切です。
まとめ
今回は、悪臭問題を解決したいスタッフの方や、相次ぐ苦情を解決したい方向けに、消臭効果の高いアイテムや手軽で便利なアイテムのメリットとデメリット、排泄臭への対策をお伝えしました。
介護の現場は様々な課題に直面していますが、一つ一つ解決できるよう日々対策を探ることが大切です。